研究課題
近年、分子標的治療薬が徐々に様々な悪性腫瘍に使用されるようになってきた。頭頸部癌においても単独もしくは抗癌剤と併用して分子標的治療薬が使用されるようになった。口腔扁平上皮癌の浸潤と転移を臨床に近い状態で再現できる正所性移植モデルを用いて線維芽細胞増殖抑制剤(トラニラスト)と血管新生阻害薬(アバスチン)を使用して、増殖、浸潤、転移に対する抑制効果があるか否かを検討した。口腔扁平上皮癌で最も悪性度の高い浸潤様式4D型と診断された舌癌患者の頸部リンパ節転移巣より樹立されているOLC-01細胞をヌードマウスの舌に移植した。翌日より1%NaHCO3溶液に溶解したトラニラストを腹腔内に連日投与し、腫瘍増殖、浸潤、転移に対する効果について検討した。移植腫瘍の大きさはトラニラスト単独投与では抑制効果はなかったが、CDDPとの併用群では有意に増殖抑制効果が認められた。リンパ節転移に関しては差異は認められなかった。間質に関しては、トラニラスト投与群で顕著に結合組織量の減少が見られ、併用群では筋線維芽細胞の特異的マーカーであるα-SMAの発現が顕著に減弱していた。癌細胞の細胞増殖活性を観察するため増殖細胞核抗原PCNA抗体を、腫瘍組織の低酸素状態を観察するために低酸素誘導性因子HIF-1α抗体を使用したところ、トラニラスト投与群で陽性率が高かった。また、口腔扁平上皮癌で悪性度の高い浸潤様式4C型と診断された舌癌患者の頸部リンパ節転移巣から樹立した高浸潤高転移性のOSC-19細胞を使用し、ヌードマウスの舌に移植した。移植後6日目からアバスチンを蒸留水にて溶解した溶液を週1回腹腔内投与し、腫瘍増殖、浸潤、転移に対する効果について検討した。移植腫瘍の大きさは差異がなかったがリンパ節転移はアバスチン投与群で有意に抑制効果が認められた。血管内皮細胞増殖因子であるVEGF抗体で血管新生を観察したところ、アバスチン投与群で血管新生抑制が認められた。
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Oncology Report
巻: 29 ページ: 445-450
10.3892/or.2012.2161.