上皮増殖因子受容体(EGFR)は頭頸部癌にて治療の有用な分子標的とされている.エピガロカテキン-3-ガレート(EGCG)は,腫瘍細胞の増殖抑制やEGFRのキナーゼ阻害作用が報告されており,我々は今回以下の2点について検討した. A.分子標的薬のEGFRシグナル抑制作用におけるEGCGによるEGFR分解作用の有用性の分子レベルでの評価.EGFRを高度に発現している血管平滑筋細胞を用い,EGCGの添加によるEGFRへの影響をウエスタンブロット(WB)にて評価した.また蛋白質合成・プロテアソーム・ライソソームの阻害剤を用いて蛋白質分解におけるEGCGの作用をWBにて評価した.またEGFRのユビキチン化についてWBにて評価した.EGCG処理によるEGFRの細胞膜から細胞質への移行と処理2時間後でのEGFR蛋白質の減少を認めた.蛋白質合成阻害剤によりその減少は促進され,プロテアソームやライソソーム阻害剤によりその減少は抑制された.EGCGとまたプロテアソーム阻害剤添加後のEGFRの免疫沈降にてEGFRのポリユビキチン化が認められた.EGCGはEGFRを蛋白質レベルにて減少させこれは生理的蛋白質分解機構であるユビキチン-プロテアソーム分解経路の活性化によることが示唆された.今後この結果ついて発表予定である. B.分子標的薬の口腔扁平上皮癌細胞株およびマウス腫瘍移植モデルの腫瘍増殖抑制効果におけるEGCGによる作用増強効果の判定.口腔扁平上皮癌細胞株であるHSC-3をヌードマウス背部皮下に移植した.今後コントロール群とカテキン投与群に分け,癌組織を取り出し腫瘍体積を評価し,また免疫染色にてEGFRの発現およびリン酸化,下流のシグナル分子とのリン酸化について評価する.この研究は進行中であり,結果を待って発表する予定である.
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