本研究において、放射線性骨髄壊死のラット実験動物モデルを作製することができ、また、その組織学的解析、タンパク質抽出などの実験方法が確立できた。組織学的評価では、放射線照射後の骨は、照射後1日目で骨髄組織内に炎症性細胞浸潤が認められ、照射後8週にて骨細胞の消失が認められた。しかし、正常組織の骨と比較して骨組織の基質に著しい変化は認められなかった。タンパク質の解析では、明らかに発現しているタンパク質に変化が認められた。しかしながら、発現の変化したタンパク質の同定までにはいたらなかった。培養細胞から細胞外基質を採取することは困難であったため、ラット骨髄間質細胞の培養細胞が分泌した培養上清を応用することとなった。しかしながら、培養上清の実験動物への投与は困難を極め、放射線性骨髄壊死の治療方法の開発にはいたらなかった。 その一方で、放射線性骨髄壊死の骨の細胞外基質の変化を示唆するために、細胞外気質分解酵素であるグランザイムBの免疫染色を行ったところ、放射線照射1日目に骨髄内と骨に発現が認められた。しかしながら、放射線照射後8週の骨組織には発言が認められなかった。これらのことから、細胞外基質を分解する酵素が、放射線照射後の骨に発現していたことにより、細胞外基質が変性、分解している可能性が示唆された。また、その変化は、放射線照射後の早い段階で引き起こされている可能性が示唆された。今後、放射線性骨髄壊死の病態解明を進め、その結果としての治療方法の探索を行っていく必要がある。 本研究期間では、今後の放射線性骨髄壊死の病態解明の礎となる結果が得られた。
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