研究課題
顎顔面の成長は、膜性骨化、内軟骨性骨化が複雑に混在して成長することが知られており、軟骨無形成症をはじめとする骨系統疾患においては、上顎骨の劣成長などの顎変形症が随伴することが報告されている。我々は、CNPノックアウト(CNP-KO)マウスは、上下顎の矢状方向への劣成長を認め、軟骨特異的CNPトランスジェニック(CNP-Tg)マウスでは上顎の矢状方向への過成長を認めたことを報告し、CNPが顎顔面形態に重要な因子であることを明らかとしてきた。今回この強力な内軟骨骨化促進作用を有するCNPを用いた新たな顎変形症治療の開発を目的に研究を行った。μCTによる顎顔面骨の形態解析にて、3か月齢のCNPノックアウト(CNP-KO)マウスとSAPプロモータを用い血中濃度上昇型CNPトランスジェニック(CNP-Tg)マウスを交配させたところ、CNP-KOマウスにおいて認めた上下顎の劣成長は野生型のマウスと同程度の顔面形態まで改善することができた。上下顎骨の劣成長を改善することができたメカニズムを解析するためにCNP-KOマウスから頭蓋底および下顎骨を採取し器官培養を行ったところ、CNP-KOから採取した頭蓋底および下顎頭は野生型マウスから採取したものに比べ、劣成長を呈していたが、CNPの添加により頭蓋底の軟骨結合部および下顎頭軟骨は有意に伸長し、頭蓋底および下顎骨の長軸方向への成長が促されることが示された。組織学的解析を行ったところ、特に肥大化層の細胞の肥大化が促進されていた。以上のことからCNPの全身投与は中顔面の劣成長の新たな治療となりうる可能性が示唆された。
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