口腔扁平上皮癌においては頸部リンパ節転移が予後因子となっており、頸部リンパ節転移の制御が本患者の予後改善に非常に重要と考えられる.これまでは口腔扁平上皮癌組織におけるリンパ管新生因子の発現と予後との解析が行われてきたのみであった.しかし、本研究では口腔扁平上皮癌のリンパ節転移機構におけるリンパ管新生とケモカインの役割について解析を行うことを目的としている。本年度は種々の口腔扁平上皮癌培養細胞を用い、VEGF-C、VEGF-DおよびFLT-4の発現レベルについて解析を行った.SAS、OSC19およびHOC313ではVEGF-Cの高発現を認め、SASおよびHOC313ではFLT-4も高発現を示した。その後、リンパ管新生因子であるrecombinant VEGF-CおよびVEGF-Dを添加し、増殖能および遊走能に与える影響について検討を行った.レセプターであるFLT-4を発現していない細胞株では増殖能および遊走能のいずれにも影響を認めなかったが、FLT-4高発現細胞では増殖能には変化を認めなかったが、遊走能はVEGF-C添加により亢進した.遊走能の亢進を認めた細胞をコラーゲンゲル内で培養を行い、同様にVEGF-Cを添加したところ、コントロールと比較して形態には変化がないものの大きなコロニーを形成し、Invasion assayでも浸潤能の亢進傾向を認めた.これらから、FLT-4陽性細胞ではVEGF-C刺激により遊走能および浸潤能が亢進し、また、これらの細胞はVEGF-Cも陽性であり、VEGF-C-FLT-4のオートクラインにより癌の進展および転移に寄与していると考えられ、口腔扁平上皮癌治療におけるターゲットとしての可能性が考えられた.
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