口腔癌の多くは外科療法が一般的であるが、機能の温存をめざした放射線療法や化学療法などが選択されることもある。しかし、1次治療後に再発を来した多くの症例は治療抵抗性であることが多く、その最も大きな原因となっているのが薬剤耐性である。近年、抗血管新生療法がこのような固形がん1次治療後の再発例に有効であることが示唆されているが、そのメカニズムはほとんどわかっていない。そこで、本研究は、シスプラチン(CDDP)耐性口腔扁平上皮癌細胞の抗血管新生薬の効果について明らかにし、その中で特にプラチナ(Pt)系抗がん剤に対する感受性について解析する目的で行った。申請者は血管新生に関する因子(ANG-1、ANG-2、VEGF、CD31)をシスプラチン耐性口腔扁平上皮癌株と親株で比較検討したところ、耐性株のほうが優位に各マーカーが活性化していることが示された。また、放射線化学療法施行前後の口腔扁平上皮癌症例について、免疫組織化学的に検討した結果、治療前の口腔扁平上皮癌と比較して、放射線化学療法後の口腔扁平上皮癌における各抗体の検出率は有意に増加しており、血管新生反応が引き起こされている可能性があることが確認できた。Ctr1抗体陽性反応について検討したが、放射線化学療法前の口腔扁平上皮癌に比べて、治療後はCtr1抗体陽性細胞数がやや少ない傾向が認められたが、有意な差は認められず、また免疫染色結果との有意な相関も認められなかった。放射線化学療法後口腔扁平上皮癌細胞の化学療法感受性については今回検索したマーカー以外の他の要因が関わっていることが示唆された。
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