研究実績の概要 |
口腔内に発症する扁平上皮癌(以下SCC)を中心とする悪性腫瘍では、発ガンの危険因子として喫煙や飲酒の他に、持続的な物理的刺激が挙げられる。前者は発癌物質による化学的なDNA 損傷をその成因とするが、後者は組織修復における急速な細胞増殖過程でのDNA 複製エラーの増幅などが成因と考えられ、癌化の過程を分離して考察する必要がある。末梢神経が物理的刺激の受容体であることは古くから認知されてきたが、近年になり、物理刺激の受容体であるTRP(transient receptor potential)イオンチャネルが上皮系に発現していることが明らかとなった。本研究課題では、TRP と発癌の相関を解析し、癌化の予防および担癌患者における腫瘍進展のコントロールを目指してきた。 これまでのわれわれの研究では、real time PCR 法および、免疫組織化学染色法により、 ①TRPV1,2,3,4 全てにおいて、ヒト口腔正常粘膜(舌、歯肉、頬粘膜、口底)での発現が確認された。②口腔扁平上皮癌と口腔正常粘膜におけるTRPV1,2,3,4 の発現量は、扁平上皮癌の方が有意に増加していた。③TRPV1,2,3,4 全てにおいて、ヒト口腔正常粘で‘飲酒あり’群の方が、‘飲酒なし’群よりも有意に増加していた。④TRPV2,3,4 において、ヒト口腔正常粘膜で‘喫煙あり’群の方が、‘喫煙なし’群よりも有意に増加しており、TRPV1 も増加傾向にあった。 上記を国際雑誌に投稿中である。
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