TNF-αは炎症反応あるいは免疫反応に関与するサイトカインであり、自己免疫疾患であるシェーグレン症候群(SS)の唾液腺組織破壊に関与していることがすでに明らかにされている。平成24年度は、抗TNF製剤のヒト唾液腺腺房細胞に及ぼす影響について解析した。その結果、抗TNF製剤はヒト唾液腺腺房細胞の増殖能に影響を及ぼさないこと、抗TNF製剤は、TNF-α刺激唾液腺腺房細胞のMMP-9 mRNAおよびMMP-9蛋白発現を抑制し、MMP-9酵素活性も抑制することが明らかとなった。また、抗TNF製剤は、TNF-α刺激唾液腺腺房細胞のアポトーシスを抑制することが明らかになった。 平成25年度は、マウスを用いたin vivoの系で抗TNF製剤のヒト唾液腺腺房細胞に及ぼす影響について解析した。抗TNF製剤のうちetanerceptとadalimumabは、ヒト化抗体であるため、マウスとのキメラ抗体であるInfliximabを用いた。その結果、 1.加齢モデルマウスにおける抗TNF製剤の影響:自然発生腫瘍が少なく、加齢研究で使用されているC57BL/6CrSIcマウスを用いて、Infliximabの投与を行った。生食投与群をコントロールとし、それぞれ10週齢、30週齢まで投与を行い、唾液分泌量と体重の測定を行った。その結果、両者に有意差を認めなかった。 2.シェーグレン症候群モデルマウスにおける抗TNF製剤の影響:加齢モデルマウスと同様にInfliximabの投与を行ったが、コントロール群と比較して、唾液分泌量および体重に有意差を認めなかった。
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