研究課題
われわれは以前より、シェーグレン症候群(SS)の唾液腺に浸潤するヘルパーT(Th)細胞に注目し、唾液腺で発現されるサイトカインに着目して研究を行ってきた。本年度は病変局所における病態についてさらに詳細に検討を行うためLaser Capture Microdissection(LCM)を用いて、同一患者間での病変局所におけるThサブセットの局在について解析を行った。検討項目には従来から報告されているThサブセットの他に近年新たに同定されたThサブセットで自己免疫疾患の病態に深く関与すると濾胞性T (Tfh) 細胞にも注目し、健常者との比較およびSSのリンパ球の浸潤程度間において検討を行った。導管周囲に浸潤した部分のリンパ球をリンパ濾胞(GC) (-)と定義し、GCを形成している部分のリンパ球をGC (+)と定義して、それぞれの病変組織をLCMにて分離採取。新鮮凍結切片において、同一患者間のGC (-)とGC (+)の2群で、Thサブセット関連分子のmRNA発現を、real-time PCR法を用いて比較検討した。相対的mRNA発現量でみると、Th1関連分子とTh17関連分子の発現は、GC (+)と比較してGC (-)で有意に亢進していた。また、Th2関連分子とTfh関連分子の発現は、GC (-)と比較してGC (+)で有意に亢進していた。また、SS の重度症例では軽度症例と比較して、Th2 および Tfh 関連分子の発現が亢進していた。本研究によりSS の導管上皮周囲に浸潤した Th1 と Th17 両者が、病態進展ではなくその発症に重要な役割を担っていることが強く示唆された。さらに、Th1 および Th17 に加えて、Th2 および Tfh が集積してくることで、病態が進展し、特にGC の形成には、Th2 と Tfh が重要な役割を果たしていることが強く示唆された。
2: おおむね順調に進展している
シェーグレン症候群の病態形成おいて、T細胞が産生するサイトカインに着目し解析を行ってきた。これまでの研究で従来より解析されてきたTh1/Th2の他にも様々なTh細胞の関連を示唆する結果を得ることができた。さらに、Laser Capture Microdissection(LCM)法を用いることでより病変局所でのサイトカインの発現を解析することができた。しかし、サイトカイン等を産生する細胞の同定には至っておらず今後解析する予定である。
本研究では、シェーグレン症候群(SS)の病態形成に関わる分子としてヘルパーT細胞が産生するサイトカインとその関連分子について解析してきた。今後はその産生細胞の同定を行って行く予定である。また、これまではSSの一亜型として報告されてきたが近年まったく異なった病態であるということが明らかになったIgG4関連疾患についてもSSと比較検討する予定である。
Real time PCR法、免疫組織化学染色法、およびLaser Capture Microdissection(LCM)法に必要なプライマーや抗体等を購入する。また、あらたな情報を得るために学会等に参加する予定でありその参加費等を支出する予定である。
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Clin Exp Immunol
巻: 169(2) ページ: 89-99
10.1111/j.1365-2249.2012.04606.x.