研究課題/領域番号 |
24792231
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松原 良太 九州大学, 大学病院, 医員 (60615798)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / ΔNp63 / EMT / 浸潤・転移 / 癌幹細胞 |
研究概要 |
本研究では癌の発生、浸潤、転移に深く関与していることが示唆されている上皮ー間葉転換(EMT)に着目し、EMTを制御する分子とされているΔNp63を介した口腔扁平上皮癌の発生、浸潤、転移の分子機構を解明することを目的として研究を行ってきた。 siRNAによりΔNp63を発現抑制させた口腔扁平上皮癌細胞株(ΔNp63発現抑制細胞)とΔNp63発現ベクターを導入した口腔扁平上皮癌細胞株(ΔNp63過剰発現細胞)におけるEMT関連分子をRT-PCR法およびwestern blotting法を用いて検索したところ,前者におけるEMT関連分子(snail、slug、twist)の発現が後者と比較して高かった。また両者における上皮系細胞マーカー(cytokeratin5、14、E-cadherin)と間葉系細胞マーカー(vimentin、N-cadherin)の発現についても比較検討したところ,ΔNp63発現抑制細胞においてE-cadherinを除く上皮系細胞マーカーの発現減弱と間葉系細胞マーカーの発現増強が認められた。細胞形態についても検討したところ、ΔNp63過剰発現細胞は多角形を呈していたが、ΔNp63発現抑制細胞は線維芽細胞様形態を示していた。 さらにこれらの細胞における増殖能をWST-1 assay、BrdU incorporation assayにて比較検討したところ、ΔNp63発現抑制細胞はΔNp63過剰発現細胞に比し、増殖活性の低下が認められた。また細胞遊走能についてwound healing assayを用いて検索したところ、ΔNp63発現抑制細胞はΔNp63過剰発現細胞に比べ、その亢進が認められた。以上のことよりΔNp63発現抑制細胞はEMTが誘導され、浸潤、転移能を獲得している可能性が推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では癌の発生、浸潤、転移に深く関与していることが示唆されている上皮ー間葉転換(EMT)に着目し、ΔNp63を介したEMTによる口腔扁平上皮癌の発生、浸潤、転移の分子機構を解明することを目的としている。現時点の研究結果からΔNp63が口腔扁平上皮癌におけるEMTに関与していることが見出されているため、研究計画としておおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策としてEMTが誘導された細胞であるΔNp63発現抑制細胞における浸潤および転移能を検討する予定である。またEMTが誘導された癌細胞は放射線感受性が低いとされることから、ΔNp63発現抑制細胞に対する抗癌剤の効果についてもΔNp63過剰発現細胞と比較を行い、検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費を翌年度以降施行する研究のための物品費、研究成果を学会等で発表するための旅費にあてる予定である。また研究を論文にまとめるための校正費、印刷費、投稿料についても次年度の研究費から使用する予定である。
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