研究課題
口唇口蓋裂の発生頻度は、モンゴロイドである日本人では出生児約500人に1人と、コーカソイド(白人、約1/800)やネグロイド(黒人、約1/1500)に比べて高い。現在では外科的治療法の進歩によりほぼ満足すべき治療効果が得られるようになったものの、患者や家族にとっての精神的苦痛と長期間における治療の身体的負担は大きい。口唇口蓋裂の発症には、環境的要因と遺伝的要因の双方が関与しているとされているが、同胞での発症率が約10倍上昇するなど遺伝的関与が強く示唆される。口唇口蓋裂の疾患感受性遺伝子の同定に関して、現在はゲノムワイド関連解析が多く用いられているが、膨大なサンプル数が必要であるため、本研究ではローカスワイド関連解析を用いることとした。そのために候補遺伝子群の絞り込みが必要であるため、口蓋組織形成に的を絞り、遺伝子の探索を行った。マウスの口蓋組織における口蓋形成時期前後の遺伝子発現をDNAマイクロアレイを用いて抽出し、解析を行った。カットオフ値を設定し、2866遺伝子を抽出した。硬口蓋と軟口蓋では遺伝子発現パターンが異なっており、裂のパターンによって全く異なる疾患感受性遺伝子が存在すると考えられた。今回の研究ではそこまでの結果であったが、それら多くの遺伝子の働きの乱れにより口蓋裂は発症すると思われ、その中で発症に重要な働きをする遺伝子を絞る必要がある。今後、心臓などの合併異常にも注目し、それら臓器の発生でも関わる遺伝子を抽出して候補遺伝子を選出し、最終的に関連解析を行いたいと考えている。
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