研究課題/領域番号 |
24792244
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
梶原 淳久 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (00382317)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 温熱 / DNA修復 / 相同組み換え修復 / 口腔がん細胞 / siRNA / BRCA2 / recombination assay |
研究概要 |
近年、我々は温熱でもDNA二本鎖切断(DSB)が生じることを明らかにしてきた。DSB修復には相同組換え(HR)修復と非相同組換え(NHEJ)修復の二つの経路がある。HR関連遺伝子のBRCA2とNHEJ関連遺伝子のKu80に注目し、これを抑制することで温熱による殺細胞効果が高まるかどうかを検討した。 細胞はChinese hamster lung fibroblast (CHL)のBRCA2変異型細胞とその親株細胞およびCHLのKu80欠損細胞とその親株細胞を用いた。各細胞を44℃で温熱処理あるいは放射線照射を行い、コロニー形成法にて生存率を算出した。放射線照射では、Ku80欠損細胞およびBRCA2変異型細胞は共にその親株細胞と比較して、高い殺細胞効果を認めた。一方、温熱処理ではKu80欠損細胞はその親株細胞と比較し同程度の殺細胞効果しか認められなかったの対して、BRCA2変異型細胞は親株細胞と比較し有意に高い殺細胞効果を認めた。このことからDNA修復を標的とした場合、治療法によりターゲットが異なることと温熱ではHR修復が標的となることが示唆された。 そこで、がん細胞においてHR修復を阻害することで温熱の感受性が高まるのかを調べるために、ヒト舌扁平上皮癌細胞株SASを用いた。SAS細胞にはBRCA2のsiRNAあるいはnegative control のsiRNAを導入した。SAS細胞においてもBRCA2のsiRNAで処理したものが、controlよりも温熱処理によって高い殺細胞効果を認めた。 次に、温熱でDSBが生じ、HR修復が行われているのかを確認するためにrecombination assayを行った。Recombination assayでは、X線と同様、温熱でもHR修復を起こした変異体がコントロールよりも多く検出され、温熱でもHR修復が生じている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の目標はsiRNAを用いた分子標的による口腔腫瘍細胞における温熱殺細胞効果の確認および温熱処理によるHR修復誘導についての解明であった。当初の計画どおりに研究を進行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の方針はSSB修復 (PARP)とHR修復(BRCA2)を同時標的とした温熱殺細胞効果の確認することである。温熱によるDSB生成のモデルとして、温熱処理時間に依存してPolβが失活すると、ラジカルを介した温熱による塩基損傷が修復されずにDNA一本鎖切断(SSB)が残存し、このSSBが異なった鎖上の近傍に起これば、温熱でもDSBが生じると考えている。もし、この生成過程が正しければ、SSBの修復系を阻害するとDSB生成が多くなることが予想され、HR修復の阻害と併用することでより、がん細胞の温熱感受性を高めることが可能と考えた。 まず、HR修復関連遺伝子BRCA2のsi-RNAを導入した口腔癌由来細胞にSSB修復関連遺伝子PARPの阻害剤(例えばNU1025やPJ-34など)を併用して、温熱処理後、コロニー形成法にて生存率を測定し、温熱殺細胞効果が増すかどうかを確認する。 次に、BRCA2のsi-RNAを導入した口腔癌由来細胞にPARP阻害剤を併用した場合とcontrolのsi-RNAを導入した口腔癌由来細胞を用いて、温熱処理直後および経時的(30分後、2時間後、8時間後、24時間後)にサンプリングする。フローサイトメトリー法によるγH2AXフォーカス形成量(DSB生成量)および経時的消失量(修復)を測定し、比較検討する。これによりSSB修復とHR修復を同時標的とした場合のDSB生成量とその経時的修復を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に必要な細胞培養試薬(血清を含む)、遺伝子導入試薬、プラスチック器具、ガラス器具、Western blot試薬、抗体などの消耗品の購入に充てる。また、研究成果の発表にも使用予定。
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