研究課題
時限骨膜伸展骨形成法(以下TIME-PEO)の有用性について検証したところ、形状記憶合金(以下SMA)メッシュとグリコール酸/乳酸ポリエステル糸の組み合わせによる骨膜自動伸展刺激により形成された骨膜下間隙に新たな骨新生が確認された。従来の研究によるSMAメッシュ固定に用いたスクリューの除去を要さずに、吸収性糸の生体内吸収過程による固定力の減弱にともない、SMAメッシュが有する形態回復力が自動的に働くことが確認された。しかしながら、その応力開始時期の詳細な時期を検証することは困難であり、あくまでもSMAメッシュ埋入、装置固定後、約2~3週間での動作確認がなされたのみで、具体的な時期を特定するには毎日のレントゲン撮影を必要とし、放射線被爆の問題が課題として挙げられた。SMAメッシュと母骨間の間隙については、μ-CTによる評価で、SMAメッシュ埋入後5週群、8週群のすべて母骨側からの骨新生が確認され、さらに母骨への皮質骨尖孔を併用した方が骨新生に有意であることが示唆された。昨年度半ばから新たな施設での実験環境を整えることで、全体的に研究の進捗は遅れており、TIME-PEOに関しての組織学的評価を完了させ、それらの報告を行う予定である。TIME-PEOは、従来までの骨延長、または骨膜延長(Periosteal distarction osteogenesis, Periosteal elevation)の報告にあるような徒手的な伸展刺激を回避できること、さらに、徒手的な伸展に必要な回転ロッド(activation rod)を必要としないことから、装置を軟組織内に完全閉鎖できるという2つの大きな利点を有している。このことより、装置の露出、感染リスクを低減させ、骨膜下間隙を安定した状態で保つことが可能となり、最終的には骨形成の安定化がはかられることが示唆された。
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