研究課題
ガン化学療法の副作用である口内炎は強い痛みを誘発するため治療の中断を余儀なくされれる場合があり、臨床上大きな問題となっている。本研究では、ガン化学療法中の口内炎誘発疼痛が憎悪する機序を解明するために、口内炎モデルラットにおけるガン化学療法薬(5-fluorouracil:5-FUおよびcisplatin)の影響を検討した。5-FUは総120㎎/㎏を、cisplatinは総8㎎/㎏を腹腔内に投与した。最終投与から2日後に、下唇粘膜を酢酸処理して口内炎を作製した。自発痛の指標として顔面グルーミング様行動の測定を行い、機械痛覚過敏については我々が最近開発した安定開口法に基づいて行った。白血球数の測定および細菌コロニー数の測定を行い、抗菌薬の前処置による影響についても検討した。5-FUとcisplatinはいずれも白血球数の減少を引き起こしたが、前者は長期で、後者は短期の効果であった。口内炎発生に伴う細菌数の増加は5-FU投与群でさらに増加し、cisplatin投与群では逆に減少していた。また、口内炎の症状は抗菌薬の前処置にて緩和した。5-FU投与群では、口内炎発症による自発痛と機械痛覚過敏の憎悪が起きており、抗菌薬の前処置にて大きく抑制された。Cisplatin投与群では、口内炎発症後も自発痛は生じなかったが、cisplatin誘発機械痛覚過敏が発症し、さらに憎悪した。Cisplatinはマクロファージの貪食能を促進するとの報告があるため、本研究で得られたcisplatin投与群での最近増殖の抑制はこの作用によると考えられる。以上のことから、5-FUは長期の細胞免疫抑制を引き起こすため感染性炎症の憎悪により口内炎誘発疼痛を悪化させるが、cisplatinは細菌増殖抑制作用を示すことにより疼痛症状を緩和させることが示唆された。
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Journal of Neuroscience Methods
巻: 239 ページ: 162-169