研究課題
口腔顔面領域の神経障害性疼痛は、その神経機構が不明であるために適切な治療方法がなく、四肢の領域の治療方法がそのまま用いられている。最近、我々は三叉神経損傷後に三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)の活性型グリアが神経障害性疼痛の発症に重要な働きをなすことを発見し、グリアをターゲットにした治療法の可能性を提唱した。そこで、本研究では三叉神経第二枝結紮モデルラットを用いて、末梢神経損傷がいかなるメカニズムでVc神経細胞活動の増強に関与するかを機能面から解明し、口腔顔面領域の神経障害性疼痛の新たな治療法の開発を目指した基礎研究を推進する。顎顔面領域の神経障害性疼痛に対するMAPキナーゼ(MAPK)の関与を解明するために、三叉神経第二枝結紮(ION-CCI)ラットを用い、顎顔面部への機械および熱刺激に対する逃避反射閾値、三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)におけるextracellular signal-regulated kinase (ERK)のリン酸化、顎顔面部への機械および熱刺激に対するVcニューロン活動を解析した。ION-CCIラットにおいて、顎顔面部への機械および熱刺激に対する逃避反射閾値は有意に低下した。ERKリン酸化陽性Vcニューロンが増加した。逃避反射閾値の低下およびERKリン酸化陽性Vcニューロンの増加は、MEK1/2阻害薬(PD98059)の髄腔内投与により、有意に抑制された。ION-CCIによって増加した侵害刺激に対するVcニューロン活動はPD98059の髄腔内投与により、有意に抑制されたが、非侵害刺激に対するVcニューロン活動は抑制されなかった。以上の結果から、ION-CCIにより発症する顎顔面部の機械および熱痛覚過敏はVcニューロンにおけるERKのリン酸化が関与していることが示された。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
PLoS One.
巻: 8 ページ: e57278
10.1371/journal.pone.0057278.