研究課題/領域番号 |
24792262
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
下間 雅史 鶴見大学, 歯学部, 非常勤講師 (50612008)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | メラトニン / 口腔粘膜疾患 / 治療薬 |
研究概要 |
超高齢社会を迎えたわが国においては、高齢者人口の増加に伴って口腔粘膜疾患は増加傾向にある。口腔粘膜上皮細胞は、基底層から角化層(表層)へと向かう活発な細胞新生のシステムにより、その構造を維持している。組織や細胞では生命活動のためにミトコンドリア内でATPが産生される際に生じるROS(活性酸素やフリーラジカルなど)の作用による、ミトコンドリア膜タンパクや脂質の酸化、ミトコンドリアDNA の損傷により、ミトコンドリアの機能異常を引き起こし、細胞老化につながるものと考えられている。口腔粘膜疾患においてもこのような酸化ストレスが口腔粘膜疾患の発症の一因となっている可能性が考えられる。生体内ではこの酸化ストレスに対してカタラーゼなどの様々なフリーラジカルスカベンジャーが働くことで酸化ストレスを抑制していることが報告されている。一方、メラトニンは、概日リズム調節ホルモンであり、強い抗酸化作用を持つことが知られている。近年メラトニンは松果体だけでなく、網膜や水晶体、卵巣、消化管、免疫系細胞といった種々の臓器や組織においても合成・分泌され局所的に作用していることが報告されてきている。唾液中においてもメラトニンの存在が確認されおり、唾液中のメラトニンが口腔粘膜疾患の予防や創傷治癒の促進といった、何らかの生理的役割を果たしている可能性があることに着目し、今年度は、まず、唾液中のメラトニンがどこで産生・分泌されているのかを確認するため、唾液腺におけるメラトニン合成の律速酵素の発現について確認したところ、唾液腺に律速酵素が発現し、唾液腺においてメラトニンが産生・分泌されていることを確認した。さらに、松果体からの分泌されたメラトニンが血清中から唾液中に移行しているかの可能性について検討するためラットの松果体摘除を行い、唾液中のメラトニン濃度についても検討を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、今年度は唾液腺におけるメラトニンの合成の有無について検討する予定であったが、顎下腺、耳下腺、舌下腺それぞれにおいてメラトニン合成の律速酵素であるAANAT、HIOMTの発現とともに、メラトニンそのものが発現していることが確認され、概ね順調に進められており、さらに、松果体摘除ラットの作製を行い唾液回収を行っており、現時点では本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに得られている研究結果をもとに、唾液中に存在するメラトニンが、松果体において合成・分泌されているのではなく、唾液腺において局所的に合成・分泌されていることを確認するために、松果体を摘除したラットにおける血中メラトニン量および唾液中メラトニン量を測定し唾液中のメラトニンの合成・分泌がいずれの組織においてなされているのかを検討する。さらに、口腔粘膜創傷治癒に対するメラトニンの影響につき検討するために、口腔粘膜に全層欠損を作成し、同部に種々の濃度のメラトニンを含浸させた徐放型ゼラチンハイドロゲルを貼付し経時的に創部の治癒の進行状態につき組織学的に検討する。さらに、in vitroにおけるメラトニンの影響についても検討するため、口腔粘膜より分離、樹立した口腔粘膜上皮細胞株を用いてその増殖、分化および酸化ストレスに対するメラトニンの影響について検討する。さらにメラトニン合成酵素遺伝子を過剰発現させた口腔粘膜上皮細胞株における酸化ストレスについても併せて検討していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度には、研究計画に基づき、細胞培養用試薬類、分子細胞生物学的検討試薬類、生化学的検討試薬類、組織学的検討試薬類、実験用動物、などに物品費を使用し、成果発表のために旅費を使用するとともに、論文印刷費などを計上している。前年度からの繰越金が発生しているのは、今年度、松果体摘除ラットの唾液中および血液中のメラトニン濃度の測定が途上であるためであり、次年度以降はこの解析を進めるとともに、さらに計画に沿って研究を進める予定であり、細胞培養、分子細胞生物学的検討、生化学的検討、組織学的検討が必要であり、本来今年度に使用する予定であったこれらの繰越金を有効に使用して、これらの解析を進め、先行している結果とともに本研究を順調に進展させていく予定である。
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