研究課題/領域番号 |
24792263
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
岸本 直隆 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (50610911)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脱分化脂肪細胞 / 脂肪幹細胞 / 組織工学 |
研究概要 |
大阪歯科大学「医の倫理委員会」の承認後、患者から同意を得て口腔外科手術時に頬脂肪体から脂肪組織を採取し、脱分化脂肪細胞(DFAT)と脂肪幹細胞(ASC)を獲得した。 両細胞を細胞培養プレートに播種し(10000 cells/well)、DMEM + 20%FBS、デキサメタゾン、βグリセロリン酸、L-アスコルビン酸2リン酸添加培地にて14日間培養した。骨芽細胞分化能の評価としてアルカリフォスファターゼ、オステオカルシン、カルシウム発現量の測定、アリザリンレッド染色を行った.また両細胞の細胞表面抗原をフローサイトメトリーを用いて解析した。 アルカリフォスファターゼは培養開始3、7日目、オステオカルシンは14日目、カルシウムは7、14日目においてASCと比較してDFATは有意に高い発現量を示した。アリザリンレッド染色では,DFATはASCと比較してカルシウムの沈着を示す赤く染色された領域が広範囲に観察された。フローサイトメトリーによる解析からDFATは単球のマーカーであるCD11bをほとんど含んでいなかった。一方ASCはDFATより単球を多く含むことが明らかになった。 以上の結果よりDFATはASCと比較して骨芽細胞分化マーカー(アルカリフォスファターゼ、オステオカルシン、カルシウム)の発現量が高く、骨芽細胞分化能が高い細胞であることが示唆された。DFATはASCよりも異種細胞の混入(単球など)が少なく、播種した細胞集団に含まれる未分化な細胞の割合が高いことからASCと比較して骨芽細胞分化マーカーの発現量が上昇したと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に予定していたヒトDFAT、ASCの獲得、in vitroにおける骨芽細胞分化能の評価を実施することができた。以前からDFATの骨芽細胞分化能の早さを指摘していたが、今回の実験で同一患者の、同一脂肪組織から採取したASCとDFATの骨芽細胞分化能を比較した。結果から仮説通り、DFATの骨芽細胞分化能はASCよりも高いことが明らかとなり、おおむね順調な結果を得たと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はヌードラットの頭蓋骨に直径8 mmの骨欠損(Critical Size Defect)を作製し、DFATを移植し、DFATの骨再生能をmicro CTやH-E染色によって評価して行くつもりである。移植時のスキャフォールドとしては多孔性ハイドロキシアパタイトを用いる予定である。研究を遂行する上での課題は硬膜を傷つけることなく骨欠損を作製することであるが、手技が困難な場合はヌードマウスへの変更を考えている。上記の研究によりDFATの骨再生能が証明されれば、DFATは歯科領域での骨組織再生における有用な選択肢のひとつとなり、臨床応用への足掛かりになると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費は主に実験動物とその飼育代、細胞培養用試薬(培養液、血清など)、細胞培養用消耗器具(ピペット、フラスコ、遠心管など)、多孔性ハイドロキシアパタイトの購入に充てる予定である。また実験結果から得られた知見を専門学会で発表する際の学会参加費や旅費、論文印刷公表時の掲載費用、別刷りの費用なども研究費から支出する。
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