口腔外科手術時に頬脂肪体を採取し、コラゲナーゼ処理後、遠心分離操作により頬脂肪体を成熟脂肪細胞とストローマ分画(SVF)に分離した。得られた成熟脂肪細胞を通常培地(DMEM+20% FBS)で完全に満たされたフラスコに播種し、天井培養法を用いて脱分化脂肪細胞(DFAT cells)を樹立した。またSVFをフラスコに播種し、通常培地にて培養し、脂肪組織由来幹細胞(ASC)を獲得した。 DFAT cellsとASCの細胞表面抗原をフロサイトメトリーにて解析した。次にDFAT cellsとASCをプレートに播種し、骨誘導培地(通常培地+デキサメタゾン、βグリセロリン酸、Lアスコルビン酸2-リン酸)またはコントロール培地(DMEM+10% FBS)にて14日間培養した。骨芽細胞分化能の評価として、骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)、オステオカルシン(OCN)、カルシウム発現量の測定、アリザリンレッド染色を行った。 DFAT cellsとASCの細胞表面抗原は同じ傾向にあり、どちらも間葉系幹細胞マーカー(CD90、CD105)を発現していた。BAP、OCN、カルシウム発現量は骨誘導培地で培養したDFAT cellsにおいて、同培地で培養したASCと比較して有意に高い値を示した。またアリザリンレッド染色では骨誘導培地で培養したDFAT cellsのプレートにおいてASCと比較して、カルシウムの沈着を示す赤く染色された範囲は大きかった。以上の結果からDFAT cellsはASCと比較して骨芽細胞分化能が高い細胞であることが示唆された。脂肪採取部位として頬脂肪体を選択すれば体表面に傷をつけることなくDFAT cellsを獲得することができ、術後の審美性に優れている。 頬脂肪体由来DFAT cellsの骨再生用ドナー細胞としての優れた特徴を明かにした本研究の意義は大きいと考える。
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