研究概要 |
本研究に先立ち、申請者らは患者より採取したヒト正常舌角化細胞HTK(Human Tongue Keratinocytes)にレトロウイルスを用いてCDK4, CyclinD1, hTERTを遺伝子導入し、不死化を試みた。これらの細胞の親細胞はhTERTで延命したヒト正常舌角化細胞であり、PD(population doubling)100でもほぼ正常な染色体像、分化能を示していた。一般的にヒト正常細胞を基にしたがん化モデルの作成は困難とされているが、HTK- CDK4/cyclinD1/ hTERT細胞株に口腔がんへの関与が示唆されるがん遺伝子を追加導入することにより、造腫瘍性のある細胞株の樹立に成功した。樹立した細胞株の中にヌードマウスの舌に同所性移植したところ約3週間で腫瘍形成し、頸部に転移を認めたものがあり、同じ細胞株をヌードマウスの皮下に1000個の細胞を移植すると短期間で腫瘍を形成した。以上の2点に着目し、limiting dilution assayにより100個,10個の細胞でヌードマウス舌・皮下で腫瘍を形成するかを検討した。100個の細胞でヌードマウス舌でも皮下でも腫瘍を形成した。これらの細胞株は口腔がん幹細胞様細胞を高率に含む細胞集団であると考えられた。この正常親細胞からがん幹細胞様細胞株への移行はドミナントネガティブ p53, cyclinD1/Cdk4などを用いてp53及びpRbを不活化後、2つのがん遺伝子の導入により成功した。この口腔がん幹細胞モデルと口腔がん細胞株(HSC-2,3,OSC-19)および臨床検体の遺伝子発現プロファイルをcDNAマイクロアレイ、リアルタイムPCR解析で比較検討し、CD44, Bmi-1, ALDH1などが口腔がん幹細胞マーカーとなりうることが示唆された。
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