ホルモンや唾液分泌、免疫など多くの生理機能には約24時間周期の概日リズムが存在する。近年の研究により概日リズムは食事や睡眠のタイミングなど生活習慣によって調節することが可能であることが示されている。一方で夜間の間食や不規則な睡眠習慣はう蝕など口腔疾患発症につながると経験的に考えられているが明確なエビデンスはない。本研究は生活習慣、特に生活リズムがう蝕発症に及ぼす影響を明らかにする目的で行った。 生活習慣とう蝕の関連調査として大学病院小児歯科外来にて16歳以下の小児に対し記録用紙を配布し、一週間の起床・就寝・食事の時刻を記録してもらった。この記録と口腔内のう蝕罹患歯数との相関を解析したところ、夕食の時刻および就寝時刻が遅い子ほどう蝕が多い結果が得られた。 次に生活習慣がう蝕発生につながるメカニズムを解明するため、唾液中ミュータンスレンサ球菌数の一日の時刻に依存した変動を解析した。小児および保護者に説明のうえ採取器具を渡し、自宅にて夕食後から就寝までの間の唾液を一時間おきに採取、宅配便にて研究室に送付してもらった。結果、遅い時間帯ほど唾液中ミュータンスレンサ球菌数が多く、う蝕発生リスクが時刻に依存して変化することが示された。 以上の結果の一部は平成25年日本小児歯科学会大会にて発表し、27年大会においても残りのデータを発表予定である。また英文学術雑誌に投稿すべく現在論文を執筆中である。 今後は今回得られたデータを患者さんや歯科医療関係者をはじめ広く社会に伝えていきたい。
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