本研究では,小児の睡眠健康・精神的健康と歯ぎしりの機能に及ぼす日常的ストレスの影響を明らかにすることを目指し,フィールドにおいて日常的なストレスに対して適応的に生じると予測される小児の歯ぎしりのパターンと睡眠覚醒リズムとの関係を直接的に示すことを目的とした。福島市に住む幼稚園,保育園,小学生とその保護者を対象とした,震災後の心理的ストレスと睡眠習慣に関する大規模調査の解析と福島以外の県外の親子に対する同調査との比較から,福島の親子のストレスレベルや睡眠問題得点は震災後3年経過後も依然高いままで留まっており,その影響が続いていることが示唆された。また,福島市内に住む親子を対象として,日常的なストレスと睡眠習慣との関連を調べるための長期実験を行った。2週間にわたり,マットレス型の睡眠計測機器を用いて小児の睡眠覚醒リズムを測定し,さらに保護者に日誌をつけてもらうことで,睡眠習慣の評価を行った。同時に,実験期間中は,毎朝起床直後および30分後に小児の唾液をサリベットにより収集した。起床後の唾液中に含まれるコルチゾールレベルは急激に上昇することが知られており,ストレスとの関連が示唆されている。実験期間中に幼稚園から小学校へ進学する期間を含めることで,小児の日常的なストレスを評価することとした。本研究の結果から,小児の日常的なストレスレベルの変動に従い,その睡眠習慣も影響を受けることが示唆された。
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