研究課題
近年、マラッセ上皮遺残は歯根膜組織の維持やセメント質形成に重要な役割を果たすことが示唆されている。しかし、マラッセ上皮遺残が歯根膜組織中に維持される機構およびその周囲環境である歯根膜組織において、ph、酸素濃度、サイトカイン、細胞間相互シグナル伝達といった微小環境の複雑かつ精密な制御がいかにして行われているのかについては不明な点が多く、さらなる解明が求められている。本研究では、歯根膜組織に存在するマラッセ上皮遺残中の組織幹細胞を同定し、周囲環境である歯根膜組織における分子制御機構の一部を解明することを目的とし、研究を行った。歯根形成期のマウスへBrdUを連続投与し、これらの長期保持細胞を免疫組織学的手法によって検出した結果、組織幹細胞の分布は歯根膜内の歯根側に沿って点在していることが示された。歯根膜細胞を、抜去歯歯根膜から単離・培養後、走査型顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡を用い、形態学的検討を行った結果、ギャップ結合の存在が示された。酸素分圧低下および擬似低酸素環境産生薬剤を用いた低酸素環境下においては、歯根膜細胞におけるギャップ結合タンパクCx-43発現量が抑制的に調整されることが示された。以上の結果から、本研究では歯根膜中におけるマラッセ上皮遺残中の組織幹細胞の分布が明らかとなり、歯根膜細胞間におけるギャップ結合が存在することが示された。また、低酸素環境下ではギャップ結合タンパクの発現が抑制的に調整されたことから、ギャップ結合を介する細胞間伝達機構が、歯根膜の恒常維持のみならず、周囲組織におけるリモデリング機構においても関与する可能性が示唆された。
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