研究課題/領域番号 |
24792286
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
廣瀬 尚人 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (50611935)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
当該年度、我々はエナメル芽細胞より分泌されるアメロブラスチン蛋白(AMBN)がエナメル芽細胞および象牙芽細胞に対して与える影響について検討を行った。 これまでエナメル芽細胞に対する影響は概ね明らかにすることができた。AMBNはエナメル芽細胞の分化および増殖に関与していた。エナメル芽細胞へAMBNを過剰発現すると細胞の増殖は抑制された。また同時にアメロジェニン、エナメリンといったその他のエナメル蛋白の遺伝子発現が有意に更新された。一方AMBNをノックダウンした場合、細胞増殖は逆に促進され、アメロジェニンおよびエナメリンの遺伝子発現は抑制された。このことより、AMBNはエナメル芽細胞の分化を促進させ、増殖を抑制する作用があることが明らかとなった。 象牙芽細胞に対する影響に関してはAMBNの直接的な影響が今のところ確認できていない。これは実験手技によるものが大きいと考えられ、今後改善が可能だと考えている。これまでのところAMBNが直接的に象牙芽細胞に影響を及ぼしているとは言えない。 このことから、AMBNは直接的に象牙芽細胞へ影響を与えているのではなく、AMBNはエナメル芽細胞の分化を促進させ、その結果エナメル芽細胞が象牙質の形成を促進しているのではないかという仮説に対して実験を同時並行で行うこととした。 エナメル芽細胞と象牙芽細胞を共培養し、さらにAMBNの有無で硬組織形成能に違いが有るのではないかと考え、研究を進めている。現在両細胞の増殖スピードが大きく異なることから、共培養における両細胞の割合や、AMBNの量など変化させて検討を行なっているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していたAMBNをエナメル芽細胞および象牙芽細胞に対して添加して行う実験だが、AMBNの精製にやや問題があり、その安定した使用および効果の確実性に関して検討が必要になったことから、実験が遅れている。今後長期安定した実験結果を得るために、精度の安定した蛋白を精製する必要があると考えている。AMBNは断片化されると、効果が変化することが指摘されており、精製したAMBNがどのような形で細胞へ到達しているのかというところは実験結果に大きく影響する所と考えている。 またエナメル芽細胞と象牙芽細胞の共培養の実験も同時に行なっているが、その両細胞の増殖スピードが大きく異なることから、こちらも実験結果がその細胞比率によって大きく影響をうけてしまっている。このことより、細胞の比率およびAMBNの比率など変化させて、安定した結果を得ることができるように現在調整しているところである。 また次年度の実験を先行して動物実験を開始した。ラットを使った歯根吸収モデルであるが、予定していたコイルスプリングによる歯の移動に対し、何点か困難な問題が発見されたため、そのモデルを変更する必要性に迫られている。現在検討中、実験継続中である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで述べたように、様々な困難により実験は少し遅れているといえる。今後はまず細胞実験において、蛋白を安定供給できる状況を一刻もはやく確立するとともに、細胞実験の条件検討を早く確定させ、象牙芽細胞に対するAMBNの作用について検討をすすめていくつもりである。エナメル芽細胞と象牙芽細胞の共培養に関しても同様で、最適な細胞比率および添加する蛋白の比率、また検討する投与後の時間も予備実験によって確定させ、次の詳細な実験へ進む必要がある。 また動物実験であるが、ラットの歯根吸収モデルの変更を検討しているところである。予定していたコイルスプリングを用いた歯の移動では確実に歯根吸収が生じない、また予想外の歯根吸収が生じてしまうこともある。また装置装着の困難性から、実験効率も悪いことが明らかになった。よって別のワイヤーを用いた口腔内装置を使うことでこれらの困難を解決できないか現在模索中である。この装置が決定すればAMBNの口腔内投与によるin vivoでの象牙質形成に対するAMBNの影響に関する何らかの結果が得られるものと期待される。
|
次年度の研究費の使用計画 |
現在のところ研究費は実験に必要な薬品および分析機器の消耗品などに当てられるよていである。当初検討されていた遺伝子発現発光測定装置であるが、現有の機器による検討でこれまでのところ足りておりまだ購入していない。実験計画の遅れがあるため、もう少しデータが揃った所で、より詳細な検討が要求される場合は購入の必要があると考えている。また、動物実験が軌道に乗った場合、これよりも多くの蛋白を精製する必要性があるため、その精製に必要な機器および消耗品の購入に当てられると考えられる。
|