MRIを利用したArterial Spin Labeling (ASL)法の撮像シーケンスや解析法を検討し、それを用いて咀嚼や口腔内への味覚刺激による、脳や唾液腺の活動(血流)変化を定量評価した。 はじめに、pseudo-continuous ASL (pCASL)のMRIシーケンスおよび解析法を検討し、これを用いて、ボランティア13名に対し、ガム咀嚼時のCerebral blood flow (CBF)データを取得・解析した。この結果、ガム咀嚼により、前頭葉、側頭葉、辺縁系などに有意な血流増加が認められた。また、この血流増加はガム咀嚼停止後にもしばらく保たれ、経時的に元のレベルに戻ることが示された。これまでのfMRI等による研究ではガム咀嚼中の脳血流の増加は示されていたが、本研究では、咀嚼停止後にもしばらく血流増加が保たれていることが非侵襲的に示された。 次に、口腔内の味覚刺激による耳下腺の血流変化(Salivary blood flow (SBF))を測定するためのMRIシーケンスを検討した。解析においては、ASLは元来脳血流を定量化するための手法であるため、耳下腺のT1値測定を行い、解析データの補正をおこなった。 最終的に、条件を満たした、シェーグレン症候群と診断されたボランティア16名と、唾液腺の形態・機能にに異常を認めない健康なボランティア13名に対し、ASLデータおよびT1値データを取得し、解析をおこなった。その結果、シェーグレン症候群と健康なボランティアでは、SBFは異なるプロファイルを示すことが明らかになった。本研究により、非侵襲的な血流の定量化の可能性が広がった。今後、唾液腺を始め様々な病態の解明や検査方法に貢献すると思われる。
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