マイクロアレイ法を用いる事によって、マウスエナメル芽細胞で発現している分子が、数十種類発見された。その内、SRY-related HMG box gene 21 (Sox21)が強く発現しており、エナメル質形成に関与していると推測された。 そこでSox21欠損マウスの表現系を調べたところ、過度の咬耗が見られたため、更に詳細に検討することにした。その結果、Sox21欠損マウスの歯は石灰化が低下しており、エナメル小柱構造が失われていることからエナメル質形成不全であることが判明した。 次にこの原因メカニズムを検討するために、Sox21欠損マウスのエナメル芽細胞を用いてマイクロアレイを行った。その結果、KLK4やアメロチンなどの終末エナメル芽細胞マーカの発現が減少している事が判明した。更にクロマチン免疫沈降法を用いてSox21と直接結合する分子を検討したところ、20種類程度の候補分子が見つかった。Sox21の発現ベクター及び、siRNAを用いてエナメル芽細胞のSox21発現量を変化させたところ、Sox21発現変化に連動した分子が一つ見つかり、本分子はSox21により、直接調節されていると考えられた。 そこで、本年度は更にこの分子の発現ベクターとsiRNAを用いてエナメル芽細胞の発現量を変化させ、RT-PCRにて調整された分子を調べたたところ、Sox21により調整された分子と類似した結果が得られた。 以上の結果から、エナメル芽細胞ではShhによりSox21の発現量が調節されていた。更に、Sox21はこの分子と直接結合し、エナメル芽細胞マーカー等の発現量を調節することにより、エナメル芽細胞の分化を変化させて、エナメル質形成不全を引き起こしていることが判明した。
|