研究課題/領域番号 |
24792298
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
武元 嘉彦 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70452943)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 嚥下 / 口唇閉鎖 / モーションキャプチャ / 協調運動 |
研究概要 |
嚥下機能は顎、口唇、嚥下関連筋などの器官が関与していることから、複数の要因を総合的に評価する必要がある。よって、本研究では①口唇閉鎖力の測定、②モーションキャプチャーによる嚥下動作の三次元的評価、③嚥下関連筋の筋活動の評価を行い、小児の嚥下関連機能を総合的に評価し、口蓋扁桃肥大が嚥下に及ぼす影響を明らかにする。 嚥下運動において、頭頚部関連器官の複合的な協調運動の評価方法は、これまで観察によるものが主であり、数値化した客観的な機能評価は困難であった。また、嚥下の支援が必要な対象者の大部分は低年齢児や高齢者であるため、簡便な評価法が望ましい。そこで、嚥下動作の客観的かつ容易な観察評価法が求められる。平成24年度は、先行研究として健常成人を対象に、簡便な方法で三次元運動解析が可能な装置を用いて、嚥下時の口唇周囲の軟組織動態を定量評価し、嚥下時舌圧と同期観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日常動作に障害を持たない健康成人男性9名を対象として、 5mlと20mlの水を口腔内に保持させて自分のタイミングにて一口で嚥下させた時の、① 嚥下時の最大舌圧値、② 嚥下時の最大口角間距離と安静時口角間距離の差(口角間距離変化量)、③ 嚥下に伴い口唇が運動してから、舌が機能するまでのタイミングを調べるために、舌圧が最大となる時間と口角間距離変化量が最大となる時間の差(口唇-舌 時間)を求めた。 嚥下時口唇運動の計測には、モーションキャプチャシステムを用いた。また、嚥下時舌圧の計測には、小型圧力センサ(共和電業社製)を用いた。切歯乳頭部付近にセンサを付与したシーネを被験者に装着させ、水を嚥下する際の舌圧の変化を記録した。口唇運動と舌圧の計測は同期して行われた。 上記3項目において、水量の相違による差についてWilcoxon検定を用いて検討したところ、一口量の増加により、舌圧に差はなかったが、口角間距離変化量は有意に大きく、口唇-舌 時間は短くなった。このことから、一口量が増加したために口唇の協調性がより求められ、舌よりも口唇の動きが嚥下を補助したと推察された。本結果は、嚥下困難者への口唇トレーニングの重要性を客観的に示すことができたと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
嚥下運動は、頭頚部関連器官の複合的な協調運動であると言われているが、本研究では、舌と口唇に着目した。 5ml は量が少ないために、口唇の補助的な動き(口角間距離変化量)が小さく、舌との協調性が少なくても嚥下できるため、口唇-舌時間が長くなったと考えられた。一方、20mlでは、一口量の増加のために口唇の協調性がより求められ、舌よりも口唇の動きを大きくすることで、嚥下動作を補助したので、口唇-舌時間が短くなったと推察された。このことから、嚥下困難者への口唇トレーニングの重要性を客観的に示すことができたと考えられた。また、発達期に携わる小児歯科の臨床の場においても、口唇に着目することの重要性を示唆するものと思われた。 先行研究により、嚥下時の口唇運動の定量評価が可能になった。今後は、嚥下動作に影響を与える因子や、関連する頭頚部器官の協調性について、より詳細に検討し、臨床応用を図る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、研究の成果を国内外の歯科系、生体工学系の学会で発表するとともに、国際誌に投稿する予定である。よって、現状では嚥下の計測や解析に必要な備品や環境は整備がほぼ完了しているため、研究費は学会での成果発表に伴う旅費や論文校正および投稿料に使用する予定である。
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