研究課題
Streptococcus mutans などの細菌が存在するプラークはう蝕の原因とされ、う蝕予防としてプラークコントロールが行われているが、プラークを完全に除去することは不可能である。一方でプラークはエナメル質の再石灰化に必要なCa、P、Fをはじめとするミネラルの貯蔵庫の役割も果たしている。したがって、プラークの組成をS. mutansなどのう蝕原性菌を減らし、Ca、P、Fなどが豊富なプラークにすれば、う蝕予防に極めて有効であると考えられる。昨年度、成人から上下顎前歯部唇・舌側面、臼歯部頬・舌側面の計8か所から採取したプラークのS. mutansとStreptococcus sobrinusの比率を比較したところ、S. mutansにおいて下顎臼歯部頬側面が最も高く、下顎前歯部舌側面が最も低かったことを明らかにした。プラークの組成には唾液の影響を大いに受けることから、フッ化物洗口実施有無による唾液因子の影響について検討した。フッ化物洗口を実施しているグループとフッ化物洗口を実施していないグループで3歳児から3年間安静時唾液を採取できた小児の唾液流量、pH、緩衝能、Mutans streptococci数、無機イオン濃度を測定し、経年的変化を調べた。その結果、フッ化物洗口を実施しているグループの方が唾液中Ca濃度は有意に低かった。その要因としてCaF2などの結合型Caが多く形成された結果,遊離型Caが減少したと推察された。緩衝能はフッ化物洗口を実施しているグループにおいて有意に経年的に高くなることが明らかとなった。Mutans streptococci数は5歳児においては、フッ化物洗口実施しているグループの方が低い傾向が認められた。継続的なフッ化物洗口は唾液因子に影響を与えたことから、う蝕予防効果のあるプラークの開発が期待できることが示唆された。
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