研究課題/領域番号 |
24792311
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
馬谷原 琴枝 日本大学, 歯学部, 助教 (60440046)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | メカニカルストレス / 加齢 |
研究概要 |
矯正治療の目的で抜歯した10歳から50歳代ドナー(10名)から歯根膜を採取し培養増殖させ歯根膜細胞(hPDL)を得た。その後Fluorescenceactivated cell sorter(FACS)にて間葉系細胞のマーカー(CD146, CD144, CD90)、造血系幹細胞(CD45)を用い、歯根膜由来間葉系細胞(CD146陽性細胞)群と歯根膜線維芽細胞(CD146陰性細胞)を分取した。CD146陽性細胞数はhPDL数の49.1±12.4%であり、ドナーの年齢によるCD146 陽性細胞の割合の差はなかった。 その後、CD146陽性細胞及びCD146陰性細胞の多分化能について比較検討を行いCD146陽性細胞は陰性細胞と比較し有意に骨芽細胞への分化能が高く、CD146陰性細胞は有意に軟骨細胞への分化能が高いことが明らかとなった。 また、長期培養中のhPDL細胞におけるCD146発現安定性について検討を行ったところ、CD146陽性細胞は培養30日間後約80%が陽性を示し、その後陽性細胞は50日で50%となった。このことより引き続きの実験にはソーティング後の細胞は培養30日以内のものを使用することとした。 次にCD146陽性細胞、CD146 陰性細胞、またhPDLをFlexer strain unit用の培養ディッシュに播種し培養後18%の伸展力負荷を行った。その結果伸展力負荷後24時間以内にCD146陽性細胞のみディッシュの中央部から剥がれ、一方CD146陰性細胞とhPDLにおいては剥がれなかった。このことから細胞のメカニカルストレス応答の能力の違いが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は培養歯根膜細胞をFACSによりCD146陽性細胞とCD146陰性細胞に分取し各細胞の割合は年齢による違いはないことが分かった。また、CD146陽性細胞の骨芽細胞分化能は約30日間は保持されることから、分取後の細胞をさらに培養を行いメカニカルストレス負荷を行うことが可能であることが明らかとなった。 しかし、これまでの研究で用いてきた18%の伸展力の、歯根膜由来のDC146 陽性細胞に与える影響はhPDLに与える影響とは異なることがあきらかになった。本研究ではまず、より大きな負荷(18%)を与え破骨細胞形成に与える影響や炎症反応について検討を行う予定であったが、負荷の大きさについて再検討する必要性が出てきた。そこでメカニカルストレスの強度を決定する予備実験を行うため、実験の進行が遅延していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
まずはCD146陽性細胞の剥離が起きない伸展力の範囲について、培養条件について検討を行う(現在検討中)。 その後その範囲内で様々な強度の伸展力を各種CD146陽性細胞、CD146 陰性細胞、またhPDL細胞に負荷し各種細胞の炎症性変化、破骨細胞形成関連因子、また骨形成関連因子について検討を行う。 またCD146陽性細胞における強い伸展力による細胞剥離のメカニズムについて検討を行うこととし、各細胞のドナーの年齢による違いの有無について検討を行う。 その後骨芽細胞形成能の活性化または破骨細胞形成や骨吸収活性化する条件を見出し、ドナーの年齢による伸展力負荷の与える影響の違いについて検討を行うこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞に負荷する伸展力の条件設定を行うために新たな細胞が必要であり、ドナーから採取した組織から細胞を培養するための培養器具、培養液、試薬の購入に使用する。 また細胞分取のためにFACSに使用する抗体の追加購入を予定している。
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