研究概要 |
本研究では骨形成に伴う加齢変化を明らかにするために歯根膜中に存在する間葉系幹細胞とそれ以外の細胞についてドナー年齢による違いと各細胞群のメカニカルストレス(MS)応答性について検討を行った。 矯正治療の目的で抜歯した歯より歯根膜を採取し培養増殖させ、歯根膜細胞(hPDL)を得た後、Fluoresc enceacivated cell sorter (FACS)にて間葉系細胞のマーカー(CD146, 144, 90)、造血系幹細胞(CD45)を用い、歯根膜由来間葉系幹細胞(CD146陽性細胞)群と歯根膜線維芽細胞(CD146陰性細胞)群を分取した。hPDL数中のCD146陽性細胞数割合は49.1±12.4%でありドナー年齢による差はあきらかでない。CD146陽性細胞のうち発現の強う細胞(CD146強陽性細胞)を用い多分化能を比較したところCCD146陰性細胞と比較し有意に骨芽細胞への分化能が高く、CD146陰性細胞はCD146強陽性細胞と比較し有意に軟骨細胞への分化能が高かった。 各細胞群にMSを負荷すると、Runx-2の発現量は弱いMS、強いMS負荷により増加した。一方Osterixの発現は弱いMS負荷では変化はなく、強いMS負荷により減少した。BMP-2発現は弱いMS、強いMS負荷により増加したが弱いMSと比較し強いMS負荷による増加量のほうが大きかった。一方また起炎物質PGE2の律速酵素COX-2発現は強いMS負荷により増加した。 歯根膜細胞中のCD146陽性細胞は骨芽細胞分化能が高く、MSに応答して骨形成関連因子の発現を増加かせることが明らかとなり、その応答性はMSの強度により異なっていることが示唆された。引き続きドナーの数を増やし、MS強度の違い、さらに骨吸収関連因子についても検討することで、矯正治療による歯槽骨頂の骨吸収メカニズム解明の一助となると考える。
|