研究課題/領域番号 |
24792317
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
和田 悟史 鶴見大学, 歯学部, 助教 (20581119)
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キーワード | 幹細胞 / ストレス / 歯周組織 |
研究概要 |
幹細胞は歯周組織の再生に必須であり、さまざまな細胞に効率よく分化誘導することが重要である。歯周組織にも少数の多能性幹細胞が存在することが示唆されているが、それらを簡単に単離し、増殖させる方法は現在も確立していない。本研究では歯根膜組織に存在する幹細胞がストレス抵抗性を持つという指標で分離できるという仮説を検証し、その幹細胞が再生過程に関与することをマウス再植モデルを用いて明らかにすることを目的とする。 平成24年度では40週齢のマウスよりストレス抵抗性細胞を分離してその核型を調べたところ、その数が多い結果となった。しかしトリプシン処理前の核型を調べると処理前から多く、初代培養の時点で核型が異常であった。そこで5、7および10週齢のC57BL6マウスを用いてoutgrowth法により皮膚由来細胞の遊離・培養を行った。分離したマウス皮膚由来細胞を培養し2、3継代後、細胞がサブコンフルエントになったところで、0.1%トリプシンを用いて8時間処理を行い(long-term trypsin incubation : LTT)、生き残った細胞の浮遊培養を行った。浮遊培養は非接着性の6 wellプレートを用いた。LTTにより生き残ったストレス抵抗性細胞が50~150 μm程度のクラスターを形成し、7日間の培養後、ゼラチンでコーティングしたシャーレで培養を行った。この操作を2、3回程度繰り返し、マウス皮膚組織よりストレス抵抗性細胞の分離を行った。 各週齢より単離したストレス抵抗性細胞の核型を調べたところ、5および10週齢より分離した細胞の染色体の数が初代培養の時点で多い結果となった。しかし7週齢マウスより分離した細胞の染色体の数は初代培養で異常は少なく、トリプシン処理後も染色体の数に異常が認められなかった。今後は7週齢より分離したストレス抵抗性細胞の分化能の検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度でストレス抵抗性細胞の分離を行う際の適切なトリプシン濃度の条件が決まっておらず、そのことが研究遅延の原因となっていた。また単離できた細胞で核型を調べたところ、染色体の数の増加が認められ、核型の異常が認められた。平成25年度では至適トリプシン濃度および反応時間の条件を決めることができて、浮遊培養よりコロニーを単離する条件を決定することができたが、依然として核型に異常が認められた。平成24年度では40週齢と比較的高齢のマウスより細胞を分離したことが核型の乱れの原因と考えて、平成25年度では若いマウスより細胞を単離した。その結果、依然として核型に乱れが多少認められるが、正常な核型の細胞を単離することが可能になった。よって平成25年度の研究遅延の理由として単離するマウスの週齢を決定することに時間がかかってしまったことがあげられる。 一方、マウス歯根膜より細胞を単離しているが、細胞の増殖が不十分で、十分な細胞数の確保が困難であったため、歯根膜由来細胞でのLTT処理ができていないため、現在歯根膜組織より細胞を分離する条件を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度より初代培養で単離した細胞の染色体数の異常が少なくなったものの染色体数の多い細胞が一部認められることから、安定した初代培養の条件検討を行う予定である。単離したストレス抵抗性細胞の幹細胞遺伝子マーカーをPCRおよび蛍光免疫染色を用いてRNAおよびタンパクレベルで調べる。 また単離した細胞に骨、軟骨、脂肪および神経細胞への分化誘導培地を用いて各細胞に分化するかどうか調べ、さらに単離したストレス抵抗性細胞が生体内で分化するかどうか確認するためにヌードマウスを用いて移植実験を行う予定である。 一方、歯根膜組織からの細胞単離について、細胞数を確保するために三次元ゲル培養を用いて出来るだけ細胞数を採取する予定である。
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