研究課題
現在、歯周組織に幹細胞の存在が示唆されているが、それらを簡単に単離し、増殖させる方法は確立していない。本研究では組織中に存在する幹細胞がストレス抵抗性を持つという指標で分離できるという仮説を立て、細胞に化学的ストレスを負荷し、幹細胞を分離することを目的とした。まず最初に40週齢のマウスを用いて皮膚由来細胞の遊離・培養を行い、0.1%トリプシンを用いて8時間処理を行い(long-term trypsin incubation : LTT)、生き残った細胞の浮遊培養を行った。次に生き残った細胞の平面培養を行い、ストレス抵抗性細胞の分離を行った。まずその核型を調べたところ、通常の染色体の数に比べて多い結果となった。しかしトリプシン処理前の時点で染色体数は多く、初代培養の時点で核型の数に異常が認められた。次に5、7および10週齢のマウスを用いてストレス抵抗性細胞の分離を行った。各週齢より分離したストレス抵抗性細胞の核型を検討したところ、5、10週齢より分離した細胞の染色体の数が初代培養の時点で多い結果となったが、7週齢マウスより分離した細胞では初代培養時およびトリプシン処理後の染色体数に異常は認められなかった。次に7週齢より分離したストレス抵抗性細胞の解析を行った。定量PCRを用いて幹細胞マーカーのNanog、Oct4およびSSEA1の遺伝子発現の検討を行った。初代培養細胞と同様に、Nanog、Oct4の発現は認められなかったが、SSEA1の発現上昇が認められた。また免疫蛍光染色よりストレス抵抗性細胞はSSEA1に陽性であった。以上より皮膚線維芽細胞に化学的にストレス負荷を行いSSEA1陽性細胞の分離を行うことが出来たことより、幹細胞がストレスに抵抗性を持ち、その性質を用いて分離できる可能性が示唆された。
すべて 2014
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Histochemistry and Cell Biology
巻: 142 ページ: 205-215
10.1007/s00418-014-1191-4