本研究では、視覚からのバイオフィードバックを応用した咀嚼時の口唇閉鎖機能の訓練方法を確立することを目的とする。この様な方法を確立することによって、患者は目標とする運動を的確に行えているか否かを確認しながら行うことができ、効果的な訓練法であると考えられる。このことは訓練に対する患者のモチベーションの向上、さらには患者のQOLの向上につながり、広く臨床にも貢献するものと考えられる。咀嚼時の顔面動作は個々の所有する顔面の骨格、筋をはじめ、歯列や咬合の影響を大きく受ける。すなわち、硬組織と軟組織のハーモニーによって多種多様な表情が生まれるものと考える。このことから、本研究では正常咬合を有する者、摂食・嚥下障害を有する者、ひとりひとりの顔面動作を計測することが必要で、臨床データの収集が不可欠である。まずは正常咬合者を対象として、計測を行った。試験食品として市販の咀嚼後に飲み込んで良いガムを用い、咀嚼時における個体差によるばらつきを抑えるために、生理的咀嚼リズムに近い毎秒1.25ストロークのリズムでメトロノームの音に合わせて咀嚼を行う様に指示し、計測を行う前にガムを1分間自由咀嚼し十分軟化させた後、正面±30°の方向に設置した2台のCCDカメラを用いたモーションキャプチャシステムにより、慣性咀嚼側での咀嚼運動時の口唇の動きの測定を行った。上記のデータをもとに、正常咬合者における咀嚼時の口唇の動きを分析し、各計測点の表示方法や、マーカーの軌跡の表示時間等、咀嚼時の口唇の動きをより把握しやすいデータの表示法を検討した。
|