研究課題/領域番号 |
24792320
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高橋 智美 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 技術専門職員 (50399953)
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キーワード | 歯根膜線維芽細胞 / 破骨細胞誘導能 |
研究概要 |
本研究は、食物の性状に基づく咀嚼刺激が、歯根膜線維芽細胞による破骨細胞の制御にいかなる影響を与えるか検索することを目的としている。昨年度までに、歯根膜組織からvimentinを発現する歯根膜由来間葉系細胞を分離し、免疫染色およびウエスタンブロッティングによる検索の結果、それらの細胞においてRANKLおよびOPGの発現を認めた。 平成25年度には、破骨細胞制御に関する細胞生物学的作用について、以下の研究を遂行した。 1. 共存培養による破骨細胞誘導能の検討:歯根膜由来間葉系細胞と破骨細胞前駆細胞を共存培養し、破骨細胞への分化・誘導能を検索した。歯根膜由来間葉系細胞とRAW246.7細胞を一定期間共存培養後、破骨細胞のマーカーとしてTRAP染色、カテプシンKおよびカルシトニンレレプターに対する免疫染色を行った。その結果、各染色に陽性を示す多核の破骨細胞様細胞が観察された。 2. 咬合力の異なる歯根膜由来間葉系細胞の検索:ラットの左上顎臼歯を抜歯し、咬合を喪失させ、3週間後に左右下顎臼歯から歯根膜を採取した。右下顎歯根膜を咬合側間葉系細胞、左下顎歯根膜を抜歯側間葉系細胞としてそれぞれ細胞分離培養を行った。咬合側間葉系細胞、抜歯側間葉系細胞に対し、破骨細胞制御因子の検討を行った。免疫染色ではRANKLおよびOPGの発現を認め、またウエスタンブロッティングによる検索では、咬合側と抜歯側においてRANKLの発現に違いがみられた。 以上の結果より、歯根膜由来間葉系細胞は破骨細胞分化・誘導能を示し、歯槽骨における破骨細胞性骨吸収に関与していること、また、咬合力の違いにより破骨細胞の分化・誘導能が異なる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の実験において、歯根膜組織から分離した細胞を用いて破骨細胞前駆細胞との共存培養を行う予定であったが、歯根膜組織から歯根膜線維芽細胞の分離培養を行うための手技の確立に、当初の予定より時間がかかってしまった。そのため25年度に行う予定であった、破骨細胞前駆細胞と歯根膜由来間葉系細胞との共存培養による破骨細胞への分化・誘導能および咬合力の変動による誘導能の変化についての検討を十分に行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、昨年度より持ち越した咬合力の変動による誘導能の変化について以下のような実験計画で行う。 1. 咬合力の異なる歯根膜由来間葉系細胞の検索:歯根膜より分離培養した咬合側間葉系細胞および抜歯側間葉系細胞に対し、破骨細胞の制御に関わる因子の発現量をより詳細に検索し、咬合力の違いによる破骨細胞制御能の違いを検討する。 2. 歯根膜由来間葉系細胞と破骨細胞前駆細胞の共存培養:咬合側間葉系細胞、抜歯側間葉系細胞とRAW246.7細胞をそれぞれ一定期間共存培養させ、破骨細胞への誘導能を検討する。誘導された破骨細胞は、破骨細胞特異的因子の遺伝子の検索やタンパク発現を指標として確認する。咬合力の違いにより分化・誘導能された破骨細胞の形態や性状が異なるかどうか、検索を行う。 3. 咬合力が回復した場合の歯根膜由来間葉系細胞の検索:一定期間、練餌飼育や対合歯歯冠削合による咬合力の減弱・喪失が起こった後、固形試料による飼育および歯冠修復により咬合力が回復することで破骨細胞制御機構がどのように変化するかを検索する。歯根膜由来間葉系細胞の破骨細胞制御因子の検討および破骨細胞前駆細胞との共存培養を行い、破骨細胞誘導能を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の実験において、歯根膜組織から歯根膜細胞を分離するための手技の確立に、当初の予定より時間がかかってしまい、25年度に行う予定であった歯根膜由来間葉系細胞と破骨細胞前駆細胞との共存培養による破骨細胞への分化・誘導能および咬合力の変動による誘導能の変化についての検討を十分に行うことができなかった。そのために研究費の一部に未使用額が生じてしまった。 次年度においては、咬合力の異なる条件で得られた歯根膜由来間葉系細胞に着目し実験を行う。破骨細胞制御因子の発現量の比較検討および破骨細胞前駆細胞との共存培養で誘導された破骨細胞の検索を行い、咬合力の変動と破骨細胞能制御機構について検討する。研究費については、これらの実験に必要な試薬、消耗品、実験動物の購入・飼育に使用する。また得られた結果を関連学会等で発表するための経費に充てる予定である。
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