研究課題/領域番号 |
24792325
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柏木 陽一郎 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (20598396)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 歯周病 / 糖尿病 / 高血糖 / 歯肉上皮 |
研究概要 |
高血糖による炎症性サイトカインIL-8とTLR発現に対する影響…研究計画に則り歯肉上皮細胞株epi 4を用いて正常時(glucose 6 mM)と比較し、高血糖(25 mM)の作用により歯肉上皮細胞において好中球の遊走を促すIL-8とTLR2のmRNA発現が上昇した。このことより高血糖はそれだけで歯肉上皮細胞に対して炎症を惹起する作用を示すと考えられる。これは歯肉上皮細胞の培養上清中のIL-8タンパク量をELISA法にても有意に上昇していることが確認された。TLR2,4タンパク発現変化についてFACS法を用いて確認した結果TLR2について発現が上昇していることが確認された。 正常時と比較した高血糖状態下での歯肉上皮細胞における遺伝子およびタンパク発現プロファイル変化について…歯肉上皮細胞を正常血糖状態下(6mM)と高血糖状態下(25mM)にて培養し、その時の遺伝子およびタンパク発現プロファイルについて炎症性のサイトカインであるCCL2、IL-6等のmRNA発現が上昇していることをreal time PCR法にて確認している。 歯肉上皮細胞において高血糖により誘導されるTLR内因性リガンドの検索について…細胞表面に存在するTall like receptor(TLR)の中でもTLR2と4については内因性リガンドにも応答することが報告されてきた。内因性リガンドとしてHSP60,HSP70などの細胞質タンパク質やHMGB1(high mobility group 1)、S100A8/A9、細胞外マトリックス分子であるヒアルロン酸,フィブロネクチン,ヘパラン硫酸などが報告されているが、歯肉上皮細胞において高血糖状態(25mM)により誘導されるそれらのmRNA発現をreal time PCR法にて定量解析を行った結果、発現に変化は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯肉上皮細胞株epi 4を用いて正常時(glucose 6 mM)と比較し、高血糖状態(25 mM)ではmRNA、タンパク産生ともに有意な差をもって上昇していることが示された。この現象は口腔歯肉上皮で明らかにしたのは初めてであり細菌の感染のない状態でも高血糖であること自体が炎症を惹起している事が示唆された。また、この現象は抗酸化物質であるN-アセチル-L-システイン (NAC)(N-acetylcysteine)によって解消されることも示された。これらのことは他の2つの歯肉上皮のcell lineでも再現された。これらのことをH24年第55回秋季歯周病学会学術大会にて発表した。 また、TLR2,4タンパク発現変化について高血糖状態下(25 mM)ではmRNA発現が有意に上昇していることが確認された。また表面タンパク発現についてもFACS法を用いて確認した結果TLR2について発現が上昇していることが確認された。 以上より当初計画の口腔歯肉上皮における高血糖状態による炎症惹起の可能性の確認とそのメカニズムにTLRが関与している可能性について着実に明らかにしてきており、概ね順調に研究が推移してきているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
TLRの関与に関して表面タンパクの発現上昇は確認したが、そのタンパクの実際の関与し機能しているのかについて検証していく予定である。また、自然発症高血糖マウスであるdb/dbマウスの歯肉の観察を行うことにより組織における炎症動態の観察を行う。また、db/dbマウスにおいてもTLRの関与が疑われた場合は実験的歯周病モデルを構築しWild typeと比較し歯周組織の炎症や破壊の程度を観察する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
高血糖実験モデル動物としてdb/dbマウスの購入、また高血糖状態が歯肉上皮の炎症状態に及ぼす影響とTLRの関与に関する解析のために実験試薬購入に使用する予定である。
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