研究課題
本研究課題では、間葉系幹細胞から歯根膜細胞へのコミットメントがどのような分子機構により制御されているかについて、歯根膜組織特異的分子の発現を指標として解析を行っている。平成24年度の研究成果について以下に報告する。まず、ビーグル犬の腹部大網膜を全身麻酔下にて採取し、コラゲナーゼ処理後、フィコールを用いた比重遠心により単核球を分離、24時間の培養の後、脂肪組織由来間葉系幹細胞を単離した。FACSを用いた表面抗原の検討の結果、単離された細胞はCD29陽性、CD44陽性、CD90陽性、CD105陰性、CD140a陰性であり、フィブロネクチンを表面コートした培養ディッシュにおいて高い増殖能を示した。そこで、次に同細胞をベータグリセロリン酸およびアスコルビン酸含有石灰化誘導培地にて培養し、硬組織形成細胞へと分化誘導を行い、各種遺伝子の発現をreal time PCRにて検討した。その結果、培養7日目でRUNX2遺伝子の発現上昇が確認され、14日目、21日目にてtype I コラーゲン遺伝子の発現上昇が認められた。興味深いことに、歯根膜細胞に特異的に発現するPLAP-1遺伝子が、培養7日目から培養21日まで上昇していることが明らかとなった。そして、同培養を30日まで継続することにより、アリザリン染色陽性の石灰化ノジュールの形成が確認された。以上の結果より、イヌの脂肪組織間葉系幹細胞から硬組織分化能を有する歯根膜細胞への誘導には骨芽細胞分化と同様の培養条件が必要となることが示唆された。平成25年度は、引き続き、未分化間葉系幹細胞から歯根膜細胞への分化誘導因子について探索を試み、分化培養条件を検討する。
2: おおむね順調に進展している
ビーグル犬より単離した脂肪組織由来間葉系幹細胞の細胞性状についての解析が済み、歯根膜細胞への分化誘導因子の一部が明らかとなった。本年予定されていた各種トランスクリプトーム解析を現在遂行しており、さらに詳細な分化誘導メカニズムが解明されるものと考えている。
H24年度の研究結果に加えて、現在までに申請者の所属する研究室で行われた3つのトランスクリプトーム解析の結果より抽出した歯根膜分化誘導因子の候補因子を絞り込み、in vitroにて検証する。分化誘導の指標にはPLAP-1に加えてPeriostin遺伝子の発現についても検討する。
in vitroでの細胞培養に用いる試薬やプラスチック器具の購入に使用する。また得られた成果について学会での発表に研究費の使用を予定している。
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Journal of Oral Biosciences
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