研究概要 |
現在までに我々はTGF-βが歯肉上皮細胞の遊走と増殖に関わることを明らかにした。TGF-βは細胞の接着にも関与していると考え,TGF-βがintegrin及び細胞外基質(ECM)がどのように制御しているかを検討した。まず歯肉上皮細胞をAaで感染させた場合の接着細胞数を,接着アッセイを用いて検討した。その結果,Aaを感染させることにより接着細胞数は有意に低下した。感染時には,integrin α2, β4, β6, Fibronectin-1, Tenascin-cの遺伝子発現量が有意に低下した。また,integrin α5, IL-8, TGF-β1の遺伝子発現量は増加した。そこで感染時のTGF-β1の働きを調べるために歯肉上皮細胞をTGF-β1で刺激後,Aaを感染させたところ,接着細胞数は有意に低下した。次に感染がない状態の歯肉上皮細胞をTGF-β1で刺激したところ,接着細胞数は有意に上昇した。その際の遺伝子発現量を調べたところ,integrin α2, β4, β6, Fibronectin-1, Tenascin-cの発現量が有意に上昇した。興味深いことに感染時に発現が上昇したintegrin α5は,非感染時のTGF-β1刺激時もその発現は上昇した。そこでintegrin α5の阻害剤を用いてAa感染時の細胞接着数を調べたところ,Aa感染時接着細胞数は減少するが,integrin α5を阻害すると接着数は減少しなかった。以上のことをまとめると,TGF-β1は感染時と非感染時には接着に対する効果が真逆であることが明らかとなった。また,TGF-β1が制御するintegrin α2, β4, β6, Fibronectin-1, Tenascin-cは細胞接着に関与するが,integrin α5はレセプターとして感染時の刺激を細胞内に伝える役割があることが明らかとなった。
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