研究課題/領域番号 |
24792329
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
峯岡 茜 広島大学, 病院, 助教 (00452623)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 歯周病 / 光感受性物質 / レーザー / LPS |
研究概要 |
歯周病は糖尿病合併症であり、慢性炎症としての歯周病をコントロールすることで、糖尿病のコントロール状態が改善するということが知られている。近年、歯周治療において光感受性物質を応用する光線力学療法やレーザーの応用が注目されている。しかしながらそれらの手技や臨床効果は確立しておらず、補助的手段にすぎないのが現状である。故に歯周病の改善に貢献しうる、有用性の高いEr:YAGレーザーの応用法の獲得を目的とし、尿素を光感受性物質として含有する光感受性試薬の開発を目指す。 今年度は尿素含有光感受性試薬の調製および歯石除去効果の評価を行った。尿素は無色であるため、視認性向上のために、従来のう蝕検知液の成分であるアシッドレッド、aPDTの光感受性薬剤の成分として既に応用されているメチレンブルーを用い比較検討した。また、リン酸カルシウムを主成分とする多孔質の石灰化組織である歯石を選択的に染色する溶媒の粘度を探索、調整した。調製試薬を用い、Er:YAGレーザー照射による歯石除去効率を視覚的に評価した(歯石付着ヒト抜去歯使用)。 尿素濃度①0.1%②1%③5%④10%溶液およびコントロール群(尿素0%)で比較検討した結果、①,②はコントロールと差が認められなかった。5%と10%ではコントロール群よりも効率的に歯石除去が可能であったが、10%では尿素の溶解性の低下が認められた。また、アシッドレッドおよびメチレンブルーの違いによる除去効率の差は認められなかった。さらに、歯石の効率的な除去が認められた5,10%尿素溶液について、Er:YAGレーザーの照射エネルギーを変えた場合の歯石除去後の歯根表面構造変化についてSEMを用いて分析した結果、いずれにおいても歯根表面の構造欠陥は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
尿素含有光感受性試薬の調整および実験材料の収集に当初の予定よりも時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は歯石を有するヒト抜去歯を用い、尿素含有光感受性試薬の調製し、調整試薬・Er:YAGレーザー併用による歯石除去効率を視覚的に評価し、さらにSEMにて歯石除去後の歯根表面構造変化分析を行った。 今後、至適な調整試薬の濃度、Er:YAGレーザーの照射条件を策定した後、Er:YAGレーザーと調製試薬併用の歯周病原性細菌に対する殺菌効果の評価を行う。 P.gingivalisおよびA.actinomycetemcomitans に対し調製した光感受性試薬併用によるEr:YAGレーザー照射を行い、嫌気培養後のコロニー形成数計測により殺菌効果を評価する。さらに、LPSに対し同様に照射を行い、リムルステストによる照射後のLPS量測定によりLPSの除去率について評価する。 また、また、現在aPDTの一つとして注目されつつある赤色LEDと光感受性ジェル(トルイジンブルー)併用による殺菌効果と比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
抗菌光線力学療法(antimicrobial hotodynamic theraphy:aPDT)では、歯周病原性細菌に光感受性物質を結合させ、特定の波長の光照射により活性酸素を発生させて選択的に細菌を破壊させる。 次年度は、Er:YAGレーザーと調製試薬併用の歯周病原性細菌に対する殺菌効果を評価することを目的とし、必要な試薬、材料を購入する。 また、現在aPDTの一つとして注目されつつある赤色LEDと光感受性ジェル(トルイジンブルー)併用療法であるFotoSan® 630(CMS Dental ApS, Denmark)を用いて、歯周病原菌の殺菌効果について比較検討を行う。
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