研究課題
能由来神経栄養因子(BDNF)が歯周組織再生を促進することを報告してきた。BDNFを安全で確実性の高い歯周組織再生療法として臨床応用するためには、そのメカニズムを詳細に解明する必要がある。ビーグル犬の根分岐部III級モデルを用いた実験では、BDNFによる歯周組織再生過程には歯肉上皮の侵入は認められなかった。歯肉上皮の欠損部位への侵入は組織の再生構築の場を占有し、再生を阻害する。本研究ではBDNFの歯肉上皮の侵入抑制のメカニズムを詳細に解明することした。昨年度までに研究結果が得られた。BDNFはhuman periodontal ligament (HPL) cellsの増殖を促進したが、human gingival epithelial cells (HGECs)の増殖には影響を及ぼさなかった。またBDNFはHPL cellsの高親和性受容体のtrkBのリン酸化は促進したが、HGECsのtrkBのリン酸化には影響しなかった。これらの結果からより詳細なメカニズムの解明を歯肉上皮細胞のアポトーシスに注目して行った。BDNFは歯肉上皮細胞のアポトーシスを誘導した。アポトーシスの促進に関与している、カスパーゼ-3の発現を上昇させた。またHGECsのBDNFによるカスパーゼ-3の上昇は、JNK阻害剤で抑制された。またBDNFはHGECsのJNKのリン酸化を促進させた。またBDNFの低親和性受容体p75のsiRNAによる発現の減弱がBDNF刺激による、JNKのリン酸化の促進、カスパーゼ-3の活性が抑制された。以上の結果から、BDNFは歯肉上皮細胞において、p75受容体を介し、JNKシグナル伝達経路が優位に働き、カスパーゼ3を活性化させ、アポトーシスを促進する可能性が示唆された。このことが、BDNFが歯周組織再生過程において歯肉上皮の深部増殖が確認されない一因であると推察される。
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International Immunopharmacology
巻: 19 ページ: 245-252
10.1016/j.intimp
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