研究課題/領域番号 |
24792333
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
板東 美香 徳島大学, 大学病院, 医員 (10510000)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 終末糖化産物 / 歯肉線維芽細胞 / 酸化ストレス |
研究概要 |
本研究では、レドックス制御(酸化ストレス反応)の観点から、糖尿病関連歯周炎の病態を調べるとともに、その治療法として酸化ストレス防御機構であるKeap1-Nrf2システムを応用することを目指した基礎研究を行う。すなわち、糖尿病の患者の血中に高値に存在し糖尿病合併症を引き起こす原因の一つである終末糖化産物(Advanced glycation end-products; AGEs)が、歯周組織における酸化ストレスマーカー、抗酸化物質、炎症性サイトカインおよび抗菌ペプチドの発現へ及ぼす影響を調べ、酸化ストレスにより生ずる組織障害や炎症増強の機構を明らかにする。さらに、Keap1-Nrf2を制御すること(Keap1の抑制やNrf2誘導)による歯周組織での酸化ストレス防御機構の促進を介した組織障害や炎症の抑制をめざす。平成24年度は、歯周組織の細胞(ヒト歯肉線維芽細胞)にPorphyromonas gingivalis由来LPS (P-LPS)とAGEsを添加し、酸化ストレスマーカー、炎症性サイトカイン、抗菌ペプチド、抗酸化酵素を測定し、歯周組織でおこる酸化ストレス反応について詳細に調べた。P-LPSは酸化ストレスマーカーである8-OHdG発現を有意に増加させ、AGEsはその発現を増加させる傾向を示した。同じく酸化ストレスマーカーであるROS、抗酸化酵素のHO-1、サイトカインのIL-6、抗菌ペプチドのbeta-defensin2のP-LPSとAGEとの共存下でさらに有意に増加した。IL-6については蛋白レベルにおいても同様の結果が得られた。これらの結果から、AGEはP-LPSとともに歯肉線維芽細胞の酸化ストレス反応を誘導し、抗酸化酵素、サイトカインおよび抗菌ペプチドの発現に影響を及ぼすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、レドックス制御からみた糖尿病関連歯周炎の病態解明とKeap1-Nrf2システム制御による酸化ストレスに対する防御機能の促進を行うことである。平成24年度には歯周組織の細胞(歯肉上皮細胞あるいは歯肉線維芽細胞)にP-LPSとAGEsを添加し、酸化ストレスマーカー、炎症性サイトカイン、抗菌ペプチド、抗酸化酵素を測定し、歯周組織でおこる酸化ストレス反応について詳細に調べることを目的とした。そのために1.AGEsの作製を行った。AGEsはOkamotoらの方法(FASEB J. 2002)に従って作製した。すなわち,ウシ血清アルブミン(50 mg/ml)とD-グリセルアルデヒド(0.1 M)を0.2 Mのリン酸緩衝液に溶解し,37℃で7日間反応後、4℃のPBS中で3日間透析し、AGEsを得た。生理活性の評価は蛍光光度計を用いて測定した。2.P-LPSおよびAGEsによる歯周組織での酸化ストレス反応に対する影響を調べた。ヒト歯肉線維芽細胞にP-LPSおよびAGEsを単独添加あるいは複合添加し、ROS産生および8-OHdGを測定し酸化ストレス状態の評価を行った。さらに、炎症性サイトカイン(IL-6)、抗菌ペプチド(beta-defensin)、抗酸化酵素(HO-1)について発現の変化を調べた。その結果AGEはP-LPSとともに歯肉線維芽細胞の酸化ストレス反応を誘導し、抗酸化酵素、サイトカインおよび抗菌ペプチドの発現に影響を及ぼすことが示唆された。しかしながら、蛋白発現解析を行ったのはIL-6のみであるため、今後さらに多種の遺伝子について調べる必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 今後は平成24年度遂行できなかった多種の遺伝子について調べる必要がある。これについては、解析すべき遺伝子のプライマーはすでに受託発注しており、研究協力者とともに解析していく予定である。また、ELISAによる蛋白解析やreal-time PCRについても並行して行う。現在使用している歯肉線維芽細胞のgrowthが遅いため、細胞株変更も検討する。さらに平成25年度では、歯周組織におけるKeap1-Nrf2システムについて調べ、siRNAによるKeap1の抑制とNrf2誘導因子によるNrf2の活性化を行い、酸化ストレスマーカー、炎症性サイトカインや抗菌ペプチド、抗酸化酵素の発現を遺伝子・蛋白レベルで調べることを目的としている。つまり、Keap1-Nrf2システムを制御し、歯周組織の酸化ストレスに対する防御機能の促進をめざす。具体的には1.歯周組織におけるKeap1-Nrf2システムの確認を行う。歯肉線維芽細胞にP-LPSおよびAGEsを単独添加あるいは複合添加し、細胞質蛋白と核蛋白を抽出する。それぞれの画分におけるKeap1, Nrf2の蛋白発現をWestern blotting法にて確認を行う。2.siRNAによるKeap1の抑制あるいはNrf2誘導因子によるNrf2活性促進を行う。3.Keap1の抑制とNrf2誘導による歯肉線維芽細胞での炎症性サイトカインの産生と抗菌ペプチド発現変化を調べる。これらの実験法は今までに行ったことがある手技であり十分応用可能であるが、研究推進のためには抗体を購入し、早期にWestern blottingの条件検討を行う必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は1、平成24年度遂行できなかった多種の遺伝子について調べる 2.歯周組織におけるKeap1-Nrf2システムの確認を行う。歯肉線維芽細胞にP-LPSおよびAGEsを単独添加あるいは複合添加し、細胞質蛋白と核蛋白を抽出する。それぞれの画分におけるKeap1, Nrf2の蛋白発現をWestern blotting法にて確認を行う。 3.siRNAによるKeap1の抑制あるいはNrf2誘導因子によるNrf2活性促進を行う。4.Keap1の抑制とNrf2誘導による歯肉線維芽細胞での炎症性サイトカインの産生と抗菌ペプチド発現変化を調べる。次年度の研究費の使用計画は、物品費として1.細胞培養に関する試薬・器具・細胞株の購入 2.PCRやreal-time PCRの遺伝子解析に関する試薬・器具・プライマー受託発注 3.ELISAやWestern blottingの蛋白解析に関する試薬・器具・抗体 旅費として研究の成果発表のための学会参加に係る費用 その他の経費として論文投稿料・印刷費などを計画している。次年度への繰越額は細胞培養に関する試薬・器具・細胞株の購入に使用予定である。
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