本研究では、レドックス制御(酸化ストレス反応)の観点から、糖尿病関連歯周炎の病態を調べるとともに、その治療法として酸化ストレス防御機構であるKeap1-Nrf2システムを応用することを目指した基礎研究を行う。すなわち、糖尿病合併症を引き起こす原因の一つである終末糖化産物(Advanced glycation end-products; AGEs)が、歯周組織における酸化ストレスマーカー、抗酸化物質、炎症性サイトカインおよび抗菌ペプチドの発現へ及ぼす影響を調べ、酸化ストレスにより生ずる組織障害や炎症増強の機構を明らかにする。さらに、Keap1-Nrf2を制御することによる歯周組織での酸化ストレス防御機構の促進を介した組織障害や炎症の抑制をめざす。H25年度は歯肉線維芽細胞と口腔上皮細胞において、AGEおよびLPSによる酸化ストレスマーカー、抗酸化物質、炎症性サイトカインおよび抗菌ペプチド発現に及ぼす影響について比較を行った。その結果、AGE受容体のRAGEと炎症性サイトカインのIL-6は、口腔上皮細胞においても線維芽細胞と同様にAGEにより発現が増加したが、その他の遺伝子群には発現変化がほとんどなかった。また歯肉線維芽細胞において、AGE刺激により発現変化のあったIL-6と抗酸化酵素のHO-1について、発現機構の検討を行った。AGEによるIL-6の誘導をMAPK inhibitorのSB203580(p38 inhibitor)とU0126(ERK inhibitor)が抑制することから、AGEによるIL-6の誘導にはp38とERK経路が関与する可能性が示唆された。また、keratinocyte growth factor(KGF)が歯肉線維芽細胞においてNrf2およびHO-1を増加することが示されたことから、KGFにより酸化ストレス防御機構を促進できる可能性が見出された。
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