研究概要 |
歯周炎は歯周組織の破壊を特徴とする炎症性疾患であり、局所で産生されるIL-1βなどのサイトカインは、歯周炎の進行に重要な役割を果たす。IL-1βはカスパーゼ1によって活性化するが、カスパーゼ1を制御しているのはインフラマソームであり、近年結晶などの刺激がNLRP3インフラマソームを活性化することが明らかとなった。本研究では歯石中のリン酸カルシウム結晶がマクロファージや好中球においてNLRP3インフラマソームを介したIL-1β産生に関与するかどうか検討した。 マウスマクロファージ(WT、NLRP3-KO)またはヒト末梢血多形核好中球(PMN)をLPSでプライミング後、カスパーゼ1阻害剤の存在下/非存在下において、歯周病患者から採取した歯石で刺激した。培養6時間後に培地上清を回収し、IL-1β濃度をELISAで測定した。 WTマクロファージをプライミング後に歯石で刺激すると、培地上清にIL-1βの産生がみられたが、NLRP3-KOマクロファージにおいてはIL-1βはほとんど産生されなかった。プライミング後のWTマクロファージにおけるIL-1βの産生は、カスパーゼ1阻害剤の添加により有意に抑制された。同様にヒトPMNをプライミング後に歯石で刺激するとIL-1βを産生した。このIL-1β産生は、カスパーゼ1阻害剤の添加により抑制された。以上の結果より、歯石中のリン酸カルシウム結晶はマウスマクロファージおよびヒトPMNにおいて、NLRP3インフラマソームを介したカスパーゼ1の活性化によりIL-1β産生に関与することが示唆された。 以上の結果は、第12回国際エンドトキシン自然免疫学会(IEIIS, Tokyo, 2012, p.160)および、2012年度日本歯周病学会九州5大学研修会(2012, 福岡, p.13)にて発表された。
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