研究課題/領域番号 |
24792335
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中村 弘隆 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70346914)
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キーワード | 歯周炎 / インフラマソーム / 歯石 / リン酸カルシウム結晶 |
研究概要 |
歯周病患者から採取した歯石を粉砕し、乾熱処理によって菌体成分を不活性化させた。マウスマクロファージをLPSで感作後、カスパーゼ1阻害剤の存在下/非存在下において、未処理の歯石または乾熱処理した歯石で刺激した。培養6時間後に培地上清を回収し、IL-1β濃度をELISAで測定した。 また健常者および歯周炎患者の末梢血を採血し、3 %デキストランで赤血球を取り除き、得られた白血球浮遊液を、Ficollを用いて単核球と多形核白血球を分離した。細胞数の計測後、プレートに播種し、TLR4リガンドであるLPSでプライミング後、各種歯石で8時間刺激した。上清中のIL-1β、TNFα濃度をELISAで測定し、多形核白血球においても歯石の刺激により、インフラマソームが活性化し、IL-1βが産生されたことを確認した。 これらのことから、歯石中のリン酸カルシウム結晶はマウスマクロファージおよびヒトPMNにおいて、NLRP3インフラマソームを介したカスパーゼ1の活性化によりIL-1β産生に関与することが示唆された。 歯周炎患者の歯肉溝浸出液(GCF)中には多数の好中球が含まれている。歯周基本治療前の歯周炎患者の4 mm以上の歯周ポケットに#50のペーパーポイントを挿入し1分間保持した後、緩衝液を入れたマイクロチューブに浸漬し、歯周ポケット内の好中球を回収した。ただちに専用ディッシュにプレーティングし、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、 エンドソーム内に好中球に貪食された歯石結晶が存在するか観察した。適切な好中球の回収が困難であるため、現在も標本を採取して観察を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成25年4月より、歯周炎患者の歯肉溝滲出液から好中球を回収して、インフラマソーム活性化がみられるかを検証した。しかしながら分離された好中球の多くに細胞死が観察され、細胞質内の観察は困難であった。これは予想していたよりも早い段階でインフラマソームを介したpyroptosisが起こることを示唆しており、浸潤してきた炎症性細胞のインフラマソーム活性化を歯肉組織内で観察する方法に変更することとした。
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今後の研究の推進方策 |
当講座ではLPS感作ラットの歯肉溝内へ高濃度LPSを頻回滴下することにより、アタッチメントロスを伴った明確な歯周ポケット形成が生じることを報告している。このラット歯周炎モデルではE. coli LPSをマイクロシリンジを用いてルイス系雄性ラット上顎両側第一臼歯歯肉溝内に毎日20回滴下し、屠殺後病理組織切片を作製、観察することにより、形成されたポケット内、接合上皮内に多数の好中球が浸潤していることが確認された。このモデルを用いて、LPSと同時にHApナノ粒子(150 nm)懸濁液を歯肉溝内に滴下し、作製された組織切片にHE染色、IL-1βに対する免疫染色を施す。単位面積辺りの炎症性細胞浸潤数やIL-1β陽性細胞数を計測することにより、歯周組織に炎症が拡大する際にHAp結晶の存在が好中球に及ぼす影響を検討する。 平成27年3月までに実験結果の解析を行い、研究結果を取りまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年4月より、歯周炎患者の歯肉溝滲出液から好中球を回収して、インフラマソーム活性化がみられるかを検証した。しかしながら分離された好中球の多くに細胞死が観察され、細胞質内の観察は困難であった。これは予想していたよりも早い段階でインフラマソームを介したpyroptosisが起こることを示唆しており、浸潤してきた炎症性細胞のインフラマソーム活性化を歯肉組織内で観察する方法に変更することとした。 歯肉組織をバイオプシーし、固定標本を作製して観察するための病理組織作製用薬品や、免疫組織染色用抗体を購入する。また歯肉溝滲出液中の観察可能な好中球も皆無ではないため、当初の研究方法も並行して行う予定である。 平成27年3月までに実験結果の解析を行い、研究結果を取りまとめる予定である。研究成果の発表のための国内、外国旅費および外国語論文の校閲費、投稿料が必要である。
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