当講座ではLPS感作ラットの歯肉溝内へ高濃度LPSを頻回滴下することにより、アタッチメントロスを伴った明確な歯周ポケット形成が生じることを報告している。このラット歯周炎モデルでは、ルイス系雄性ラットの上顎両側第一臼歯歯肉溝内に、マイクロシリンジを用いてE. coli LPSを毎日20回滴下し、10日後の病理組織切片を作製・観察することにより、形成された歯周ポケット内・接合上皮内に多数の好中球が浸潤していることが確認された。この時、LPSと同時にハイドロキシアパタイト(HAp)ナノ粒子(150 nm)懸濁液を歯肉溝内に滴下したラットの病理組織切片では、歯周ポケットの深化が’認められた、また単位面積辺りの炎症性細胞浸潤数やIL-1β陽性細胞数は増加しており、摘出された上顎第一臼歯歯肉からは高濃度のIL-1βが検出された。これらのことから、LPSによる感作ラットの歯周ポケット形成には炎症性サイトカインIL-1βが関与しており、IL-1βはHApナノ粒子を貪食した炎症性細胞のインフラマソーム活性化を介して産生されていることが示唆された。
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