研究課題
糖尿病は歯周疾患の発症および進行に影響を及ぼすと考えられているが、両疾患の関与に関する詳細なメカニズムは、推論の域を出ていない。高血糖状態は炎症誘発性である終末糖化産物(AGE)の産生を引き起こしており、II型糖尿病患者において、血清中のAGE濃度と歯周病の重症度は有為に相関している。今回、マウス骨芽細胞と破骨細胞に歯周病原細菌菌体成分とAGEを添加し、糖尿病環境下における炎症性骨代謝の機序に関して、検討した。1. マウス骨芽細胞よりtotalRNAをグアニジンを用いて抽出し、Real-timePCR法を用いて骨代謝に関連するアルカリフォスファターゼ、オステオカルシン、オステオポンチン、骨シアロタンパク、I型コラーゲン、RUNX2の遺伝子発現を調べた。AGEおよびLPSの単独刺激は、刺激3日後においてこれら遺伝子発現の増加を誘導した。一方、AGEとLPSの共刺激は、これら遺伝子発現への影響を認めなかった。2.マウス破骨細胞前駆細胞であるRAW264.7細胞にTRAP染色を行い、多核の破骨細胞形成数を測定した。AGEおよびRANKLの単独刺激は、刺激5日後において多核の破骨細胞形成数を増加させた。一方、AGEとRANKLの共刺激は、単独刺激と比較して、破骨細胞形成数の増加の割合が小さかった。以上から、AGEと歯周病原細菌菌体成分は、骨代謝を高回転型へと誘導するが、両者の共存は、低回転型の骨代謝を引き起こす可能性が示唆された。
3: やや遅れている
糖尿病の状態を細胞培養に反映するために、当初は培地中の血糖量を調節して実験を行っていた。しかし、実験結果にばらつきが出たため、計画を変更し、終末糖化産物(AGE)を使用して、現在研究を行っている。
終末糖化産物の使用により、研究データが安定してきたため、引き続き計画を遂行していく。また、同学内科学講座と適宜連携し、実験計画および結果について意見を仰ぎ、必要に応じて研究計画の修正を加える。実験の遂行に関しては、当講座の大学院生より協力を得ている。
平成25年度に、高血糖状態でのLPS刺激による破骨細胞の分化・活性化に関する検討を行い、学会にて発表する予定であった。しかし、血糖量の設定によりデータにばらつきを認めたため、計画を変更し、終末糖化産物(AGE)を使用してLPSやRANKL刺激による炎症性骨代謝に関する検討を行うこととし、現在も実験計画を遂行中である。そのため、次年度使用額が生じた。終末糖化産物(AGE)を使用してLPSやRANKL刺激による炎症性骨代謝に関する検討を行い、結果を纏めた学会発表および論文発表を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)
Journal of Periodontology
巻: 85(3) ページ: 455-464
10.1902/jop.2013.120705
Inflammation
巻: Nov 28 ページ: Ahead of print
10.1007/s10753-013-9782-0