研究課題
歯周炎の病変歯肉局所には、多数の抗体産生細胞(形質細胞)が浸潤している。これらの細胞が産生する抗体の標的抗原は明らかでない。歯肉病変で産生されることから、これらの抗体を解析することで、歯周炎の病態解明への貢献が期待される。Porpyromonas gignivalis(Pg)は歯周病菌のひとつであることから、病変歯肉組織に浸潤する形質細胞が、抗Pg抗体を産生している可能性がある。そこで本研究では、酵素抗原法を用いて、歯周炎病変歯肉に浸潤する抗Pg抗体産生細胞の証明を試みた。Pg抗原として、Ag53およびArg-gingipainとLys-gingipainの蛋白分解酵素ドメイン(Arg-pro、Lys-pro)および赤血球凝集素ドメイン(Arg-hgp、Lys-hgp)のビオチン標識蛋白をコムギ無細胞系により作製し、20例の歯周病患者を対象に歯肉組織における抗Pg抗体を検索した。歯肉組織抽出液の抗Pg抗体を検索するためにAlphaScreenを行った結果、いずれかのPg抗原に対する陽性シグナルが17例に認められた。一方、歯肉組織切片に対する酵素抗原法の結果、いずれかのPg抗原に対して陽性シグナルを示す細胞が17 例で認められた。さらに、ビオチン化抗原とB細胞マーカーである抗CD79a抗体との蛍光二重染色を行ったところ、ビオチン化抗原陽性細胞でCD79aも陽性であり、酵素抗原法陽性細胞が抗体産生細胞であることが確認された。一方、ビオチン標識抗原と未標識抗原との競合反応による酵素抗原法の吸収試験では、同一の未標識抗原によって、標識抗原による染色シグナルの低下が認められ、歯肉組織切片上の抗体の特異性を確認できた。これらの結果より、歯周炎病変歯肉に浸潤する形質細胞が抗Pg抗体を産生していることが証明された。歯周病の炎症病態形成において、Pgが強く関与することが再確認された。
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Molecular Oral Microbiology
巻: In press ページ: In press
10.1111/omi.12052