研究課題
本研究では、食事の質的低下が肝臓における小胞体ストレス応答を誘導し、全身的な糖代謝機構に影響を及ぼすことを明らかとし、発達期における適切な食習慣が肝機能の発達を介して個体の成長発育の重要な因子となることを検証する。粉末食(以下Soft群)あるいは固形食(以下Hard群)の摂取前後のマウスの血糖値の動態について比較検討を行った。30分間の摂取量については両群間に差は認められなかったものの、Soft群の血糖値に関して、食後の上昇と絶食後早期の低下が確認された。これらの結果から、粉末食では吸収・消化が迅速に行われるため、摂取前後の血糖値の動態が大きく、それを制御するための糖代謝調節機構の負担は大きくなるものと推察される。食餌を介した肝臓への慢性的な負荷が肝臓の糖代謝機構に与える影響を解析するため、長期飼育を行った。Soft群では有意に高い平常血糖値と低い血中インスリン濃度が確認され、マウス血清中のアドレナリン、ノルアドレナリン、コルチコステロン量の測定では、Soft群で有意に高い傾向があり、副腎の束状帯の肥厚が認められた。これらのマウスを用いて糖代謝機能に関する比較検討を行ったが、血糖値の動態については有意な差は認めなかったが、糖負荷時の血中インスリン濃度については有意な上昇が認められた。また血清中カテコールアミンの上昇による心臓血管機能への影響を解析すると、心拍数に差はないが、拡張期血圧、および平均動脈圧がSoft群では有意に高いことが明らかとなった。軟食は一般食よりも栄養吸収効率が良く、急速な血糖値の増減が起こり、生体における最大の糖貯蔵器官である肝臓への負荷が大きいものと推察され、その慢性的摂取は肝臓の糖代謝機構の発達過程に影響する可能性が考えられる。
すべて 2014
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Life Sciences
巻: 103 ページ: 8-14
10.1016/j,lfs.2014.03.022