研究課題/領域番号 |
24792358
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
大迫 文重 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10398406)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | カルテノイド |
研究概要 |
β-クリプトキサンチン(以下、β-cry)は、温州みかんに豊富に含有されているカロテノイドで、日本人における血中濃度が外国人と比較して高いことが知られている。近年、数多くの研究からβ-cryの健康増進作用は、発がん抑制作用や抗酸化作用、糖尿病や骨粗鬆症の予防、体脂肪低減効果や美容効果が明らかになった。これに加え、β-cryが歯槽骨の吸収を抑制する。これらの健康増進作用のなかでも、特に、生活習慣病である歯周病に対するβ-cryの効果について注目し検討した。 本研究の目的は、β-クリプトキサンチンを用いて、歯周病原細菌や歯肉増殖を誘発する免疫抑制剤シクロスポリンに対する歯周組織への効果を組織学・免疫学的に検討することである。これにより、歯周組織の健康保持や歯肉炎・歯周炎・歯肉増殖といった歯周病の予防や治療を目的としたβ-cryの新たな可能性を検討することである。 本年度は、歯肉線維芽細胞および歯根膜細胞に対して細菌刺激をおこないβ-cryの効果ついて検討を行った。 歯肉線維芽細胞において、P.gingivalis 由来LPS刺激前にβ-cryを添加した群がβ-cry非添加群くらべ、IL-1β・IL-6・IL-8で発現が減少した。一方、P.gingivalis由来LPS刺激後にβ-cryを添加した群がβ-cry非添加群においてLPS誘導性のIL-8の産生を抑制した事から、抗炎症作用を有する事が示唆された。さらに作用機序として、LPS 刺激による細胞内シグナル伝達に関与するERKの活性化を阻害する事で、IL-8の産生が抑制されたと考えられた。歯根膜細胞において、P.gingivalis刺激後にβ-cryを添加した群がβ-cry非添加群くらべ、IL-1β、IL-6、IL-8、TNF-αの産生を抑制した。 以上より、β-cryには歯周組織に対する抗炎症効果がある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、β-クリプトキサンチンを用いて、歯周病原細菌や歯肉増殖を誘発する免疫抑制剤シクロスポリンに対する歯周組織への効果を組織学・免疫学的に検討することである。これにより、歯周組織の健康保持や歯肉炎・歯周炎・歯肉増殖といった歯周病の予防や治療を目的としたβ-cryの新たな可能性を検討することである。 本年度は、歯肉線維芽細胞および歯根膜細胞に対して細菌刺激をおこないβ-cryの効果ついて検討を行った。歯肉線維芽細胞において、P.gingivalis 由来LPS刺激前にβ-cryを添加した群がβ-cry非添加群くらべ、IL-1β・IL-6・IL-8で発現が減少した。一方、P.gingivalis由来LPS刺激後にβ-cryを添加した群がβ-cry非添加群においてLPS誘導性のIL-8の産生を抑制した事から、抗炎症作用を有する事が示唆された。さらに作用機序として、LPS 刺激による細胞内シグナル伝達に関与するERKの活性化を阻害する事で、IL-8の産生が抑制されたと考えられた。歯根膜細胞において、P.gingivalis刺激後にβ-cryを添加した群がβ-cry非添加群くらべ、IL-1β、IL-6、IL-8、TNF-αの産生を抑制した。以上より、in vitroにおいてβ-cryには歯周組織に対する抗炎症効果がある可能性が示唆された。以上の結果は、研究の実施計画における達成度はおおむね進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、β-クリプトキサンチンを用いて、歯周病原細菌や歯肉増殖を誘発する免疫抑制剤シクロスポリンに対する歯周組織への効果を組織学・免疫学的に検討することである。これにより、歯周組織の健康保持や歯肉炎・歯周炎・歯肉増殖といった歯周病の予防や治療を目的としたβ-cryの新たな可能性を検討することである。 今後、in vivoにおいて、歯周病に対するβ-cryの効果について検討をおこなう予定である。具体的には、研究計画書・方法に示すように歯周病モデルならびにシクロスポリン歯肉増殖症を作製し、β-cryを塗布し組織学的および免疫学的検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の実施計画においてニコチンに対する検討を行う予定であったが、未だ検討の半ばである。次年度の研究費の使用計画としては、歯周組織細胞に対して細菌刺激と同様にニコチン刺激を行いβ-cry処理による予防、治療効果について検討する。
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