研究概要 |
b-クリプトキサンチン(b-cryptoxanthin 以下、b-cry)は、温州みかんに豊富に含有されているカロテノイドで、日本人における血中濃度が外国人と比較して高いことが知られている。近年、数多くの研究からb-cry は、発がん抑制作用や抗酸化作用、糖尿病や骨粗鬆症の予防、体脂肪低減効果や美容効果が明らかになっている。歯周病原因子に対するヒト歯根膜細胞のIL-6とIL-8産生は,β-cryによって陰性対照に比べ減少した.そしてβ-cryは,RANKLを発現誘導しなかったが,陰性対照に比べ陽性対照でオステオプロテグリン(OPG)産生を増加させた.このOPG産生は,歯根膜の恒常性に関与する生理的咬合力と同程度のメカニカルストレスに対しても増加した.なお,細胞の形態学的変化はなかった.以上から,β-cryは歯周病原因子により生じる歯周病の骨吸収を予防する可能性が示唆された(Arch Oral Biol 2013; 58, 880-886)。さらに、 P. gingivalis 由来LPS刺激前にβ-cryを添加した群がLPS刺激群にくらべて、炎症性サイトカインの発現が減少した事により、歯周病に対する予防効果がある可能性が示唆された。また、LPS 刺激による細胞内シグナル伝達に関与するERK・p38の活性化を阻害する事で、炎症性サイトカインの産生が抑制されたと考えられた。一方、P. gingivalis 由来LPS刺激後にβ-cryを添加した群においてIL-1β mRNAのみ減少した。これは、β-cry は歯周病において治療効果より予防効果を期待できる可能性が示唆された。
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