研究課題
【目的】頸部聴診法は直接訓練中に行える唯一の嚥下障害スクリーニング法で、介護・医療現場において用いられている。本研究ではVF検査時に記録した嚥下時産生音のうち嚥下前後の意識下呼気音を対象として音響学的分析を行い、呼気音の周波数特性を利用した嚥下障害の客観的な判定方法ならびに判定基準の確立を目指す。【対象・方法】対象は2010年10月-2019年12月までにVF画像・嚥下時産生音同時記録システムを用いて検査した患者のうち呼気音の産生が安定していた者、のべ63名とした。VF検査時に試料の嚥下前後に3回呼気音を産生させた。検査時に録音されたものを、FFTを用いて時間窓長を変えながら分析を行った。分析されたデータのうち、62.5Hz-250Hzの低周波数帯域と全体の周波数帯域でそれぞれエネルギーを算出して平均した後、音量に変換し、低周波数帯域の値から全周波数帯域の値を減算して正規化を行った。この値をAD値と設定した。VFの所見は日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士の歯科医師1名が判断し、喉頭侵入・誤嚥を認めなかったSafe群、喉頭侵入を認めたPen群、誤嚥を認めたAsp群の3群に群分けした。これら3群の嚥下前後における意識下呼気音のAD値をScheffeの多重比較法を用いて統計解析を行った。【結果・考察】分析した全ての時間窓長においてPen群とAsp群と比較し、Safe群では有意にAD値が低い値を示した。一方、嚥下の前後で比較したところ、全ての群において嚥下前後のAD値に有意な差は認められなかった。VF撮影前に咽頭部の残留に対して排出指示や吸引を行ったが、検査者の聴覚のみで判定を行ったため、今回のような低周波数帯域ではヒトの聴覚で判定できず、咽頭部に貯留が残っていた可能性があった為AD値が変化しなかったと推定された
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