研究課題/領域番号 |
24792366
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
溝口 尚子 明海大学, 歯学部, 助教 (00548919)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 光学計測 / 膜電位感受性色素 / 島皮質 / 味覚 / 嗅覚 |
研究概要 |
「食」は生命維持に欠かせない要素であり,QOLを高める上でも重要な位置を占めている。食事の際に感じる「おいしさ」とはflavor(風味)”味・匂い・舌触り”であり,中でも「味覚」と「嗅覚」の関与が必須と考えられている。中枢神経系において味覚情報は視床腹内側核を,嗅覚情報は梨状皮質を介して島皮質に送られるが,その統合機構については不明な点が多い。 そこで本年度は,島皮質における視床と嗅皮質からの入力の統合様式を明らかにするために全脳動物標本を作製し,味覚の中継核である視床後内側腹側核(VPMpc)と匂いに関する情報を送る嗅球(OB)に同心円刺激電極を留置し,それぞれの応答を見るために適正な刺激条件を確立するとともに,入力のタイミングによって変化する島皮質における応答性を観察した。 VPMpcへ電気刺激を行ったところ,島皮質において範囲別に3種類の応答が得られた。中大脳動脈に近接して左右の不全顆粒皮質(DI)に応答が認められるもの,DIであるが左右に離れた位置に応答が認められるもの,顆粒皮質(GI)に応答が認められるものである。この結果は,個体差のほか,VPMpcは小さい核であるにも関わらず味覚以外の体性感覚等の中継核でもあるので,わずかな刺入部位の違いで異なる応答が出やすいことが影響していると思われる。一方,OB腹側表層に電気刺激(50 Hz,5回連続刺激)を行ったところ,梨状皮質全体に最大振幅の大小により2種類の応答が得られた。これについては今後解剖学的に刺激部位を確認する。 OBもしくはVPMpc片方のみを刺激した場合は応答部位が重なる部分を殆ど認めなかった。OBとVPMpcを同時刺激(50 Hz,5回連続刺激)したものについて解析すると,応答部位やROIにばらつきが大きかったため,入力のタイミングによる応答に規則性が見つからなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の課題は全脳動物標本を作製し,味覚の中継核である視床後内側腹側核(VPMpc)と匂いに関する情報を送る嗅球(OB)に同心円刺激電極を留置し,それぞれの応答を見るために適正な刺激条件を確立することと,入力のタイミングによって変化する島皮質における応答性を観察することの2点であった。 成果としては,1つめの課題に関してはOBおよびVPMpcの適正な刺激条件は電気刺激した場合にそれぞれの一次感覚野である梨状皮質と島皮質に数パターンの応答が得られるところまで至った。 しかし2つめの課題に関してはOBとVPMpcを同時刺激(50 Hz,5回連続刺激)したものについて解析すると,応答部位やROIにばらつきが大きかったため,入力のタイミングによる応答に規則性が見つからなかった。 そこで平成25年度は,VPMpc刺激に比べて応答のばらつきが少なく,より味覚刺激に特化した応答が電気刺激によって再現可能と考えられる鼓索神経刺激を行いOB刺激との統合様式について検討する。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果をもとに,視床後内側腹側核(VPMpc)刺激に比べて応答のばらつきが少なく,より味覚刺激に特化した応答が電気刺激によって再現可能と考えられる鼓索神経刺激を行いOB刺激との統合様式について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に所属の変更があったため,次年度へ繰越す研究費が生じた。 しかし現在,前所属部署との共同研究が可能となったため実験に必要な備品はすでに揃っており、大型機器の新規購入の必要はない。 よって当該研究費は平成25年度請求する消耗品に上乗せし価格が高騰している膜電位感受性色素と,同心円電極(インピーダンス:500 kΩ)に充てる予定である。
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